米博物館が原爆写真集 惨状伝える118点

「Flash of Light,Wall of Fire」の表紙

 米国テキサス大(テキサス州)の付属歴史博物館「ブリスコー・センター」が被爆75年に合わせ、広島、長崎の原爆投下直後の惨状を伝える写真集を米で出版した。題名は「Flash of Light,Wall of Fire(閃光(せんこう)、炎の壁)」。1945年8月の原爆投下後、同年中に撮影された広島64点、長崎54点(計118点)を収載している。
 同博物館は米国史が主要テーマ。写真集は当時の報道機関や政府、軍などの所属カメラマンら16人と、旧文部省原子爆弾災害調査研究特別委員会など2団体の撮影写真を、英語の説明文付きで収載。長崎については故山端庸介氏らの撮影による。やけどを負った市民の姿、甚大な被害を受けた街並みなどが原爆被害の実態を克明に伝える。
 収載写真のデータは、国内の写真家らで原爆写真を収集、保存している日本の民間団体「反核・写真運動」(東京)が提供した。同団体は原爆投下直後の写真の撮影者らの呼び掛けで82年発足し、原板やオリジナルプリントを保有、管理している。
 同団体は被爆70年の2015年「決定版 広島原爆写真集」「決定版 長崎原爆写真集」(いずれも勉誠出版刊)を出版。これに感銘を受けた同博物館のドン・カールトン館長らが、今夏の米国での出版と写真展開催を計画。館長らは18年に東京や広島、長崎を訪れ、被爆者からの聞き取り、現地調査などに当たった。
 写真展は新型コロナウイルス感染拡大の影響で来年以降に延期されたが、写真集は予定通り8月刊行された。同団体の小松健一運営委員・事務局長は「被爆75年の節目に原爆を投下した米国で、被爆者ら日本側の協力によって写真集が出版されたことは意義がある。先輩らの遺志を果たすことにもつながる」と話す。
 「Flash of Light,Wall of Fire」はテキサス大出版局刊、255ページ、定価50ドル。米大手ネット書店などで購入可能。

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