コロナ禍の港町・横浜、接客ロボが活躍 感染リスクはゼロ「頼もしい同僚」

料理を配膳するロボットT5=横浜市中区の「招福門」

 新型コロナウイルス感染症が直撃した港町・横浜で、接客ロボットが活躍している。感染リスクはゼロ。愛嬌(あいきょう)のあるしぐさや語り口で、利用者にも好評だ。

 「お客さま、ご注文をお持ちしました」

 横浜中華街(横浜市中区)で飲茶食べ放題が評判の「招福門」。ショウロンポウとごま団子を客席まで運び、給仕したのは新入りの店員だ。

 配膳して厨房(ちゅうぼう)まで戻る途中、すれ違う客に丁寧に呼び掛けた。「申し訳ございません。道を譲っていただけますか?」

 広報の鈴木安佳音さんは「頼もしい同僚です」。力持ちで、疲れ知らず。子どもたちに人気で、早くも看板店員になりつつある。何より、コロナ感染の心配は皆無だ。人工知能(AI)搭載の自律走行ロボットだから。

 その名は「T5」。同店は8月、コロナ対策として1機を試験的に導入。配膳ロボットを活用するのは、この中華街で唯一という。赤外線センサーで通路を感知し、90席のフロアを自在に往来。子どもが歩く速度ほどで一度に5カ所、重さ50キロまで配送でき、1日数百皿を運ぶ。

 コロナ禍で中華街は風評被害にさらされ、人出は例年の4割程度にとどまる。「苦境だからこそ、話題づくりで盛り上げたい」と鈴木さん。これから親しみやすい愛称をつけたり、声優による音声を追加したりするつもりだ。店内は一部フロアが4月から休業中。全面再開できれば、将来的に機数を増やし、本格的な導入も検討している。

 コロナに感染した軽症者や無症状者用の宿泊療養施設として県が借り上げるアパホテル横浜関内(同区)でも、小型ロボットが活躍している。遠隔操作型の「Orihime」だ。

 ホテルに常駐する県職員が別室からタブレットで操作。カメラで利用者の表情を確認しながら通話し、弁当の提供や施設案内に役立っているという。

 神奈川県は同じ受け入れ施設の湘南国際村センター(葉山町)にも、5月から配備。両手に収まるほどの大きさで、顔や手のパーツを動かしてジェスチャーもできる。担当者は「親しみやすい見た目で、利用者は内線電話よりも気軽に相談できるようです」と話す。

 T5販売代理店のテクトレ(同区)によると、飲食店や福祉施設から問い合わせが相次ぎ、人材派遣会社も派遣スタッフとして導入を検討しているという。副社長の関野博樹さんは「人とロボットが協働する時代の変化はコロナ禍で加速しています」と実感している。

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