新型コロナウイルス禍は冬季競技にも深刻な影を落としている。フィギュアスケートではグランプリ(GP)シリーズ第2戦のスケートカナダ(オタワ)と第4戦のフランス杯(グルノーブル)の中止が決まった。今季は2022年北京冬季五輪に向けた重要なプレシーズン。スケートカナダに出場予定だった18年平昌五輪女子4位の宮原知子(関大)が、実戦が遠ざかる現状への不安や今季初戦となる12月の全日本選手権(長野市ビッグハット)への思いを語った。(共同通信=藤原慎也)
―10月末のスケートカナダが中止になったときの心境は。
大会に合わせて結構、順調に準備できていた。(練習拠点の)カナダ国内で感染者が急増しており、懸念がなかったと言えばうそになるが、さすがに中止にはならないだろうと思っていた。中止が発表される直前に(昨季から指導を受ける)リー・バーケル・コーチから聞いたが、最初は残念な気持ちが大きかった。はぁ~って。その日の練習は体がちょっと重かった。
―2月のババリアン・オープン(オーベルストドルフ=ドイツ)を最後に試合から遠ざかっている。
GPシリーズ第1戦のスケートアメリカ(ラスベガス)や日本で行われている大会を見ていると焦りもあるが、それよりもそろそろ試合をしたいなという気持ち。試合に出たら自分がどんな感じで滑れるのかも気になる。
―年明けから海外生活が続く。帰国しようとは考えなかったか。
帰国も考えたが、いったん帰国したらカナダに戻ってこられない可能性が大きかった。コーチも振付師もこちらにいるのに自分だけ日本に帰ってしまうと、ずっと自主練習になる。悩んだが、カナダにいることを決めた。
―食事は全て自炊か。
自分でメニューを考え、週に1回、一気に料理して作り置きをしている。基本は和食が多い。最近は炊飯器で鶏ハムを作っている。
―3月中旬から5月末までアイスリンクが閉鎖。どう過ごした。
映画をたくさん見た。週に3、4日、リモートでバレエやダンスのレッスンも受けていた。身に付いたかは分からないけど、いろんなジャンルに触れることができた経験は大きい。演技につながると思う。
―技術を落とさないための工夫は。
感覚がなくなるのが嫌だったので、ジャンプのイメージトレーニングは毎日やっていた。あと、ローラースケートにも挑戦した。ただ、6月1日に久しぶりに氷に乗ったとき、感覚が違って、足がのり付けされたみたいな感覚になっていて全然前に進まず、めちゃくちゃ焦った。ローラースケートを真剣にやり過ぎた。
―今季のプログラムについて。
ショートプログラム(SP)は昨季のエキシビション「グノシエンヌ第1番」を仕立て直した。(元世界選手権王者の)ステファン・ランビエルさんの振り付け。このエキシビションが好きだったということもあるけど、自粛期間もあって新しい演目をつくる時間がなくなってしまったというのも理由の一つ。フリーはプッチーニのオペラ「トスカ」。過去にプッチーニの「ラ・ボエーム」「蝶々夫人」を滑っていたので、「トスカ」もやってみるかと自分で決めた。7月に(名振付師の)ローリー・ニコルさんに振り付けてもらった。
―練習中の大技トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の状況は。
まだ、試合に入れる段階ではないけど、去年に比べると成功に近づいているなという感覚。だんだん回転軸がつかめるようになってきたというか、言葉で説明するのは難しいが、何となくいい踏み切りが分かってきたという感じがある。
―全日本選手権への意気込みを。
全日本で楽しみながらいい演技をするというのが、一番のモチベーションになっている。去年は(6年ぶりに表彰台を逃す4位に)悔しかった分、今年は絶対に頑張りたい。