対馬の蜂蜜の味

 対馬市のニホンミツバチの養蜂に関する寄稿を、本紙生活面に先月掲載した。蜜を採取する手法や作業内容、独特の巣箱の作り方、歴史などを紹介した▲執筆した同市の養蜂史研究家、小松勝助さん(80)からその後、蜂蜜入り小瓶と一緒に手紙が届いた。それによるとこれまでに、親蜂が幼虫を巣の外に引き出して幼虫が死んでしまう、いわゆる「子出し病」という行動があちこちで見られ、対馬の養蜂は一時大きな打撃を受けたとのこと▲蜜蜂は一部の巣箱にだけほそぼそと残って数年が経過。近年、全島で群れが少しずつ戻りはじめ、小松さんの巣箱にも昨年11月、8年ぶりに小規模の群れが入った▲先輩の指導を受けながら砂糖水を与えるなど世話をして、冬を越え、一群が別の巣箱に移る「分蜂」も復活。力が回復しつつあることを裏付けた▲今秋巣箱のふたを取ってみると蜜がたっぷりたまっており、未熟で小さかった群れの仕事ぶりに感動したという。今季の採蜜は、餌不足にならないよう少しにとどめた。共存の思想と愛情が、養蜂の根本にはあるのだろう▲手紙は「若い頃、やわらかい餅にかけた『ミツ餅』が一番おいしかったですね」と締めくくっていた。早速わが家の冷蔵庫の冷凍餅を焼き、頂いた蜜をかけて食べてみた。やさしい味がした。(貴)

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