バイデン氏 勝利 「核廃絶 先頭に」 被爆地訪問願う

バイデン氏への期待の声が聞かれた座り込み=長崎市、平和公園

 米大統領選で民主党のジョー・バイデン前副大統領の当選が確実となり、長崎の被爆者らからは「核廃絶の先頭に立って」「被爆地訪問を」と期待や注文の声が上がった。

 「どうなることかと本当に心配した」。9日、長崎市松山町の平和公園で約90人が集まった通算460回目の「反核9の日座り込み」。あいさつに立った県平和運動センター被爆連の川野浩一議長(80)は混迷の末、ようやく出たバイデン氏の当確の報に胸をなで下ろした。
 これまで川野氏は、トランプ氏の自国第一主義と、それがもたらした米国内外の分断を批判してきた。オバマ前大統領が掲げた「核なき世界」の継承を掲げるバイデン氏について「近いうちに核廃絶の先頭に立つと信じたい」と述べ、「核は必ずなくなる。さらに運動を続けよう」と呼び掛けた。
 県被爆者手帳友の会の朝長万左男会長(77)は、トランプ氏が史上初の米朝首脳会談で朝鮮半島の非核化を掲げた行動力については一定評価。オバマ氏が実現できず、バイデン氏も目指すとみられる「核の先制不使用政策」について「簡単ではない。バイデン氏の実行力を見たい」と話した。
 被爆者で、「長崎の証言の会」事務局長の森口貢さん(84)は、来年2月に失効する米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)の延長問題や、米中対立に触れ「(各国首脳と)じっくり話し、平和的な解決を」と注文した。
 長崎市の田上富久市長は、来年夏に開催予定の核拡散防止条約(NPT)再検討会議を巡り、新政権に対し「実効性のある核軍縮の道筋」を示すよう求めた。「原子雲の下で起きたことを見て、聴いて、感じてほしい」として、バイデン氏の現職大統領としての被爆地訪問に期待した。
 大統領選と同時実施された連邦上院選は、共和、民主両党のどちらが議席の過半数を獲得するか不透明だ。
 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の吉田文彦センター長は、民主党が過半数を取れなくても、イラン核合意への復帰など「大統領権限でできることは多い」と指摘する。「コロナ対策も大変だと思うが、米国は核軍縮のリーダーシップを取る責任がある」として、核軍縮への早期着手を求めた。


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