戦力外の順番は「練習を見れば分かる」 プロ21年の森野氏が語る“短命”の共通点

中日で活躍した森野将彦氏【写真:若林聖人】

中日の黄金期支えた森野氏「プロ野球選手って、伸びしろがなくなったら終わり」

11月に入り、12球団では来季に向けた戦力外通告が本格化している。プロ入りから3年でチームを去ることもあるシビアな世界で、生き残っていくのは一握り。中日で21年間プレーした森野将彦氏は「誰かが入ってくれば、誰かが去るのは当然」と語る。先月に初の著書「使いこなされる力。名将たちが頼りにした、“使い勝手”の真髄とは。」(講談社)を出版。投手と捕手以外どこでも守った“万能選手”は、短命に終わる必然性を見てきたという。

熾烈極める環境で自らの地位を築いてきたからこそ、その言葉にも重みが増す。「プロ野球選手って、伸びしろがなくなったら終わりだからね」。2017年限りで現役を引退し、今年からプロ野球解説者として活動の幅を広げる森野氏は、戦力外のニュースに触れる度にそう思う。

厳しい意見にも思えるが、生温い世界でないのは身を持って感じてきた。東海大相模高から1997年にドラフト2位で入団。攻守両面の器用さで1軍での出場機会を年々増やしていった反面、「便利屋で終わってしまう」という危機感もあった。プロ10年目を前に自身の意識を大きく変え、2006年には「ミスタードラゴンズ」と言われた立浪和義氏から三塁の定位置を奪取。落合博満監督のもと、2004年から4度のリーグ優勝を含む8年連続Aクラスの黄金期を支えた。

プロ21年間で通算1801試合に出場。1581安打、165本塁打、782打点をマーク。現役を退いた2018年から2シーズンは打撃コーチを務めた。四半世紀近く身を置いてきた世界では毎年、複数の選手たちが志半ばに現役のユニホームを脱ぐ。付き合いの深い選手が去ることには寂しさも当然あったが、それがプロだと言い切る。

「何か欠点があり、それを補えるだけの力がない選手が戦力外になる。第三者から見ると、当然その順番っていうのもある。野球選手としての立場であえてドライに言うなら、仕方ないなと」

短命な選手に共通する“逃げ”の姿勢「ひとつの事をやってられない」

頂点を目指して共に戦う同僚は、限られた枠を争うライバルでもある。チーム内には“序列”があり、その底辺にいる選手たちが戦力外になる。「仮にプロ生活が10年あるとしたら、最初の3年でどこまで基本の土台ができたかで決まる。その後の4~6年目である程度勝負できないと早く終わる」。経験則からそう語る森野氏は、わずか数年でプロ人生の岐路に立たされる選手を「日々の練習を見ていたら分かる」と言い切る。

「ひとつの事をやってられない。何かすぐに変えてみようとする。探究心があるという見方もできるかもしれないけど、何かを極めようとはならない」

壁にぶつかると、まず目先を変えてみる。懸命な試行錯誤にも見える一方で、安易な“逃げ”につながるという。「長くやれるのは、基本があるから。吉見(一起)や大島(洋平)だってそう」。35歳を迎えた今でも衰えを感じさせない竜の安打製造機や、今季限りで引退した黄金期のエースを引き合いに、“長生き”の秘訣を説く。

著書で語っている通り、森野氏自身がユーティリティプレーヤーとして重宝されたのも、選手としての素地が築かれていたからこそ。あえて口にする厳しい言葉は、プロ人生の瀬戸際にいる選手たちの尻を叩くエールでもある。(小西亮 / Ryo Konishi)

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