【Q&A】大学生の就職内定率  リーマン直後以来の急落、「氷河期」再来の懸念

合同会社説明会=11月4日、東京都新宿区

 新型コロナウイルスの感染拡大が、学生たちの就職活動に暗い影を落としている。人手不足を背景に完全な売り手市場だった状況は一変、来春に卒業を予定する大学生の就職内定率は10月1日時点で、7割を切った。リーマン・ショック直後の2009年(10年3月卒)以来の落ち込みで、「就職氷河期」の再来を懸念する声も出ている。現状をQ&Aでまとめた。(47NEWS編集部)

 Q 就職を希望している大学生の内定率は。

 A 文部科学、厚生労働両省の調査によると、10月1日時点の大学生の内定率は69・8%。前年同期比で7・0ポイント減った。

 Q 調査方法は。

 A 全国の国公私立大62校を対象に、4770人の学生を抽出。電話や面接などの方法で、性別や就職希望の有無、内定状況などを聞き取った。

 Q 大学生の就職内定率は、どれぐらい深刻なの。

 A 1996年の調査開始以降、リーマン・ショック後の2009年10月(10年3月卒)の7・4ポイント減に次ぐ下落幅だ。 

 Q 文系か理系か、地域の違いなどによっても差がありそうだ。

 A 文理別では、文系の内定率が68・7%(7・5ポイント減)で、理系の74・5%(4・8ポイント減)より落ち込みが目立った。

 大学の所在地で見ると、関東地区では内定率が74・4%(6・1ポイント減)だったのに対し、北海道・東北が64・2%(10・3ポイント減)など、地域によっても差が出た。

 

 Q コロナの収束が見通せず、企業側に余裕がなさそうだ。

 A 就活情報会社「マイナビ」の調査によると、21年卒業予定の大学生らを対象に採用活動をした企業のうち、20%超が内定を出す基準を前年より厳しくしていた。ボーダーラインで採用されていた学生が割を食った可能性がある。内定を取り消された学生もいる。

 顕著な影響が出ているのは、旅行業や航空業、飲食業などだ。全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスは21年度入社について、グループ各社で当初は約3200人を募集していたものの、約700人の採用にとどめた。22年度入社は約200人としている。外食産業は雇用維持すら難しく、新卒者が一段とあおりを受けかねない。

 Q 短大や専修学校(専門課程)の学生の状況も調べているが、調査結果は。

 A 短大の内定率は27・1%で、前年同期比13・5ポイント減。専修学校(専門課程)は45・5%で14・9ポイントと大幅な落ち込みだ。

 Q 大学生の内定率と比べ、より厳しいのはなぜか。

 A 専門技能を多く学ぶため、景気動向に合わせて志望業種を変更しにくい面があるとみられる。

JR東京駅前

 Q 国は、今回の数字をどう受け止めているのか。

 A 加藤勝信官房長官は17日の記者会見で「第2の就職氷河期世代をつくらないよう、政府一丸となり、学生の雇用を守るため全力を挙げる」と強調している。

 Q 「氷河期世代」とは。

 A 近年で最も就職活動が厳しかった1990年代半ばから2000年代初めにかけての卒業生だ。バブル経済の崩壊で企業が採用枠を絞り、多くの新卒学生が就職の機会を奪われた。

 非正規雇用などで不安定な収入に苦しみ、十分なキャリアを形成できなかった人も多い。そのまま高齢化すれば公的支援が必要となり、将来の社会保障費の膨張を招きかねない。政府は、氷河期の再来を何としても回避したいと考えている。

 Q 具体的にはどのような対策を。

 A 厚労省と文科省は、コロナの収束が見通せない中、卒業後3年以内の既卒者を新卒扱いで採用するよう企業側に求めている。

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