【混迷の石木ダム】インタビュー・中村法道知事 代替案なく不退転の決意

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 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業。事業採択から45年の歳月が流れ、県は家屋などを強制撤去できる行政代執行の一歩手前まで手続きを進めてきた。だが今も水没予定地に暮らす13世帯は反対の姿勢を崩さず、事態は混迷を深めている。互いが納得する形で解決する余地はないのか。中村法道知事に聞いた。

 -事業が進まない要因と県の責任をどう考えているのか。

 川棚川の治水の安全性確保と佐世保市の慢性的な水不足解消のため「ダム建設に依(よ)らざるを得ない」と、地元住民の理解が得られるよう歴代知事や職員が何度も戸別訪問するなど努力を重ねてきた。この間、1982年に強制測量を実施し、行政に対する不信感が相当大きくなったのは事実。この点について当時の高田勇知事はのちに「ご心労、ご迷惑をお掛けした」旨の発言をされており、私たちも同じ思いを申し上げてきた。ただそうした経過の中でも8割の地権者の方々から土地を提供していただいた。住民の安全安心の確保が強く求められる中、ダムがいまだに完成していないことに強く責任を感じている。

 -ダムの治水、利水効果について県・佐世保市と反対住民の主張は溝が深いが、埋められると思うか。

 これまでに河川の氾濫が起きた降水量には現在進めている河川改修で対応できるが、それ以上の100年に1度かつ最も危険な雨の降り方でも、住民の生命・財産を守るという水準で事業を進めている。利水では人口は減少しているのに水の需要予測が過大と指摘されているが、一定の余裕量は必要。全国のダムも同様に推計されている。時間をかけて説明すれば理解していただけると思う。だが事業を白紙に戻さなければ話し合いに応じないといった主張が繰り返され、耳を傾けてもらえない状況が続いており非常に残念だ。

 -県幹部は昨年9月以来の知事との面談を働き掛けているが、住民は先に工事の中断を求めている。

 大規模災害が頻発するような状況では一刻も早い環境整備は行政の責務。話し合いが進まなければ工事再開もあり得る、との前提で話し合うことはあるかもしれない。実現すれば、まずはダムの必要性を理解してもらうことが最も重要になる。幾通りもの選択肢の中から今の案を選んできた経過があり、さまざまな疑問に答えられる。

 -知事は行政代執行について「(2022年3月までの)任期中に方向性を出したい」と述べている。

 住民の理解を得て事業を完成させるのがベスト。行政代執行は最後の最後の手段。状況の推移を見極めながら総合的かつ慎重に判断したい。

 -行政代執行に踏み切れば、県も世間から批判されダメージは大きい。現実的な選択肢になり得るのか。

 新たに50戸以上の移転を伴う河川拡幅や、海水淡水化装置の導入など、相当コスト高になってもダム以外の手法を選択するという県民・市民の意見が多く出てくれば話は別だが、現実的に考えると代替案はない。不退転の決意で事業に臨まなければならないと考えている。行政代執行がやむを得ない局面となれば、批判やお叱りを甘んじて受ける覚悟で進めなければならない。

 -それは政治生命を懸けるという意味か。

 行政代執行をするのであれば、まさに政治生命を懸けた決断が必要になる。


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