地球市民集会20年

 気さくな人柄で人気があるが、主義主張をあまり語らない。長崎市長だった故伊藤一長さんは在職のころ、時にこう評された。ご自身が発案者であるその集会でも先頭には立たず、市民の結束の場をつくる“裏方”に徹した▲海外からも非政府組織(NGO)が集う「核兵器廃絶-地球市民集会ナガサキ」は20年前のちょうど今ごろ、長崎市で初めて開かれた。4日間で延べ5千人以上が参加し、被爆地が熱気に包まれたのを思い出す▲その前、伊藤さんはオランダであった1万人規模の平和NGO集会に参加し、「長崎でもできないか」と考えたらしい。相談を受けた元長崎大学長の故土山秀夫さんが実行委員長を務め、長崎集会が実現した▲最終日の11月20日に「長崎アピール」を出した。第一に、核兵器禁止条約の実現に向けた行動を市民に呼び掛けている▲条約は3年前に成立し、50の国・地域の同意を得て、近く発効する。被爆者の訴えと、市民の結束と、支える力あっての前進に違いない▲核保有国も日本政府も条約に背を向け、道のりはなおも遠いが、光明もある。米大統領選で勝利宣言したバイデン前副大統領は、かつてオバマ前大統領が目標にした「核なき世界」を再び掲げるという。道しるべが遠くに見え、被爆地の行動が重みを増す。歩みを止めるまい。(徹)

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