将棋の第70期王将戦挑戦者決定リーグ最終局は20日、東京都渋谷区の将棋会館で行われ、高校生プロの藤井聡太二冠が木村一基九段に勝ち、公式戦通算200勝を挙げた。日本将棋連盟によると、18歳4カ月での達成は調べられる範囲では最年少記録という。これまでは1989年に羽生善治九段が到達した19歳1カ月だった。
今年7月に初タイトルとなる棋聖を史上最年少の17歳11カ月で獲得。続く8月には今回の対戦相手である木村九段を破って王位を取り、史上最年少で二冠に輝いた。成長スピードがさらに増した感のある藤井二冠が新たな称号を手に入れた。それでも、対局後のインタビューでは「全く気づいていなかった」と話すなど淡々としていた。(共同通信=榎並秀嗣)
▽「最速」は逃す
公式戦通算200勝到達時の年齢を年少順に並べると、3位に谷川浩司九段(20歳10カ月)、4位に森内俊之九段(21歳7カ月)、5位に渡辺明三冠(21歳8カ月)が続く。いずれもタイトルを複数回獲得している、そうそうたる顔ぶれだ。
藤井二冠は18年12月、調べられる範囲では史上最速(プロ入り後2年2カ月)、最年少(16歳4カ月)で公式戦通算100勝到達を挙げている。この時は羽生九段の最年少記録(17歳6カ月)を更新すると同時に、プロ入り2年3カ月という最速記録も更新した。
ただ、今回は「最速」の更新は果たせなかった。藤井二冠はプロ入り後4年1カ月で到達したが、羽生九段がプロ入りから3年11カ月で達しているからだ。
▽唯一の「8割超え」
とはいえ、勝率は8割3分3厘(200勝40敗、未公開対局を含む)で羽生九段が持っていた7割9分1厘(200勝53敗1持将棋)の最高勝率記録を31年ぶりに更新した。
藤井二冠は100勝到達時の最高勝率(18敗、8割4分7厘)も保持している。この時は中原誠16世名人が1968年に樹立した8割2分6厘(21敗)を50年ぶりに抜いている。
注目するべきは、勝率がともに8割を超えていることだ。これは歴代のトップ棋士でも成し遂げられなかったことだ。中原16世名人の200勝達成時の勝率は7割8分4厘(55敗)。史上3位という素晴らしい記録ではあるが、100勝時に比べるとおよそ4分下げている。藤井二冠も勝率を下げている。それでも、1分4厘にとどめている。
周囲から厳しく研究されることに加え、タイトル保持者との対局が続くなどしたにもかかわらず、ほぼ変わらない勝率を保っている。そこに藤井二冠のすごみと強さが現れている。
タイトル保持者のため、来期は予選免除になる。対局数が減るだけでなく、トップ棋士との対戦がさらに増えることになる。藤井二冠は「これからどんどん対戦相手も強くなってきて、より厳しくなってくるので対応できるようにしたい」と気を引き締めた。
▽うれしくない「初」も
最年少での通算200勝という快挙達成の裏で悔しい思いもした。
木村九段に勝ったことで王将戦リーグを3勝3敗で終え、残留に望みをつないだ。しかし、残留を争っていた広瀬章人八段も永瀬拓矢王座に勝利。3勝3敗で並んだものの、前期成績が反映される「順位」で上位の広瀬八段が残留となった。
藤井二冠が全棋戦のリーグ戦で陥落や降級などを喫するのはプロ入り後、初めてのことだ。藤井二冠は「(二冠達成後)内容的にペースをつかめていないところがある」と口にするなど、現在の状態に満足していない様子だった。
来期の抱負を聞かれると「まだ実力が足りないところがかなりある。より実力を高めて、コンスタントに各棋戦で上位にいけるようにするのが目標」と静かに、しかし力を込めて語った。