コロナも影響しているアメリカの温室効果ガス(GHG)排出の現状

地球規模の問題となっている温室効果ガス(GHG)

 地球温暖化に大きく影響を与えており、地球規模の問題となっている温室効果ガス(以下、GHG)。アメリカにおいて、その排出量などの現状はどうなっているのだろうか。アメリカの現状を紹介する前にまず、地球規模でのGHG排出の現状について触れたいと思う。

 米国環境保護庁(以下、EPA)によると、IPCC2014で報告された世界規模で、人間の活動によって排出される主要なGHGの割合は次のようになっている。一番多い割合を占めるのは二酸化炭素(CO2)で、化石燃料の使用や産業活動に由来するものと、森林伐採やその他の土地利用への直接的な影響によるものを合わせて76%にのぼる。その次にメタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、フッ素系ガス(HFC、PFCなど)と続く。

 また、世界気象機関(WMO)の6月の報告では、コロナによる世界的なロックダウンが3か月平均で8%の化石燃料排出削減などをもたらす可能性があるとのことだ。これにより、封鎖制限が緩和される時期によって異なるが、2020年に排出量が4?7%減少する可能性があるという。コロナは我々の生活だけなくGHG排出にも大きく影響を及ぼしているようだ。

アメリカの温室効果ガス(GHG)排出の現状

 さて、アメリカのGHG排出について紹介したい。まず見ていただきたいのはbeforeコロナの1990年から2018年のアメリカのGHGの総排出量のグラフだ。このグラフから1990年以降、2007年頃からGHGの総排出量は減少傾向にあることがわかる。まだまだ高水準ではあるが、近年は徐々にGHGの総排出量は減少しているようだ。

 次に、アメリカにおけるGHGの主な排出源について。EPAによると2018年におけるGHG排出量の多い排出源は上位から運輸、発電施設(主に化石燃料を用いた発電所)、工場などの産業活動、商業施設および住宅施設、農業となっている。GHG排出の原因は農業以外では主に化石燃料の燃焼によるものである。運輸と電力生産の2分野が半分以上の割合を占めているのが特徴だ。

 また、コロンビア大学の研究チームによると、コロナの影響によりCO2排出量が5~10%程度削減され、他のGHG排出量も削減されているという。これはコロナの影響でニューヨークの都市全体を閉鎖したことにより、交通量が大幅に減ったことが主な要因だということだ。これはアメリカに限らず世界的に起こっている現象のようだが、もちろんアメリカの他の都市においても同じような現象が起きているのではないかと思われる。

 なんとも皮肉な話だが、現状ではコロナによってアメリカはもちろん、世界的にもGHG排出量が削減されていると言っても良さそうだ。既に述べたようにアメリカではbeforeコロナにおいてもGHG排出量が減少傾向にあったとのことだが、with/afterコロナ時代の今後は、都市封鎖のような一時的な状況以外でも、生産活動の変化の仕方によっては、さらにGHG排出量が減少していくことが期待できるかもしれない。

先日、アメリカ大統領選でバイデン氏が勝利したことで、トランプ政権が脱退したパリ協定に再加入すれば、さらにアメリカの地球温暖化対策が進んでいくのではないだろうか。今後の動向に注目したい。

© 株式会社メディアシーク