全グレード「e-POWER」で勝負。新型日産ノートの衝撃度に迫る

日産のコンパクトカー「ノート」が3代目として11月24日に発表されました。2代目は2016年に追加したハイブリッドシステム「e-POWER」が高く評価され大ヒットモデルになりました。8年ぶりのフルモデルチェンジですが、思わず唸ってしまうほどの進化、衝撃とも言えるその内容を解説します。


e-POWERがノートを変えた

2代目となるノートが発売されたのは2012年9月。当時も多くのライバル車がひしめき合う中での市場投入でしたので、何かしらの“飛び道具”が無ければいけません。当時はスーパーチャージャーと呼ばれる過給器を搭載することで出力などを向上させる方式を取っていました。またライバル車に比べるとボディサイズがやや大きめなこともあり室内スペース、特に後席の広さも高く評価されました。

しかし、ライバルがモデルチェンジを行うことで販売面でも厳しい時代がやってきます。本来であればここでフルモデルチェンジのタイミングですが、色々な事情もあり、ここに投入されたのがリーフで培った電動化技術を応用した「e-POWER」です。

簡単に言えばこれもハイブリッドシステムのひとつで「シリーズ式」と呼ばれるものが基本となっています。ただ日産はこれを「e-POWER」と呼ぶことで新しい時代の電動車両としてのポジションを確立したかったのです。

この戦略は見事に当たり、大ヒットモデルになりました。普通末期のモデルは販売台数も苦しくなるのですが、ノートの場合は真逆で一気に人気モデルに再浮上。2017~2019年には3年連続(暦年)国内でのコンパクトカーセグメントで販売台数No.1となったことで証明されています。

ガソリン車は設定なしの大胆戦略

これを受けての3代目が今回の新型ノートです。2代目の末期もすでにe-POWERが販売7割以上を占めていたこともあり、ある程度予想はしていましたが、新型はなんとピュアガソリン車を廃止して、e-POWERのみという大胆な戦略に打って出ました。

9インチの大画面ナビは多機能が自慢。「X」グレードのみメーカーオプションとなります

戦略の話は最後にするとして、新型は3グレードの設定。
F 205万4800円
S 202万9500円

そして最上位グレートとなる
X 218万6800円

を設定。発表当時はFF車のみですが、すでに4WD車も追加することも発表されています。

e-POWERは大きく進化

e-POWERは搭載するエンジンはあくまでも「発電用」でそこで得た電気をバッテリーに溜めてモーターで駆動する方式です。

ゆえにモーターによる胸のすくような加速感やアクセルペダルだけで運転できる「ワンペダルドライブ」など旧型から高く評価されてきました。

しかし、発電専用のためにエンジンが走行中に突然「ブーン」と回ることもあり、そこに違和感を覚える人がいたのも事実。そこで先行して発売した「キックス」に搭載した第2世代とも呼べる新型e-POWERをこのノートにも搭載しました。

出力で約6%、トルクも約10%高められている点はもちろんですが、キックスでも採用された、バッテリーが一定残量ある時には極力エンジンを回さないことにプラスして、世界初となる「路面状態に応じた発電制御」を行うことで室内の静粛性を従来以上に高めることができます。

実際、キックスで体験しているのですが、街中などではエンジンがかかる頻度が下がっているので何よりも静か、そして滑らかな走りとなっていることからも期待できます。

エクステリアデザインも大きく進化

大きく進化したのはe-POWERだけではなりません。やはりそのデザインは驚きとも言えるものです。

ホイールベースは旧型より20mm短くなっていますが、室内の広さは変わらないとのことです

デザインコンセプトは「タイムレスジャパニーズフューチャリズム」。先行して発表されているピュアEVである「アリア」と共通のデザイン言語を継承しているそうで、組子をモチーフとしたフロントグリルや薄型のヘッドライト、リアも水平方向に拡がるコンビネーションランプなどによりワイド感を強調しています。

ボディサイズは旧型より全長が55mm、ホイールベースが20mm短くなり、従来よりコンパクトな塊感が強く出ています。ホイールベースは短くなっていますが、室内の広さにはほとんど影響がないそうです。もちろん立体駐車場に入庫可能な全高となっている点は言うまでもありません。

これが次の時代の品質

テクステリアだけでなくインテリアはもっと驚くべきものです。アリア同様のバイザーレスの7インチのメーターと9インチのナビゲーションディスプレイ(オプション)が設置されますが、何よりもスイッチ類を含めた全ての質感が大きくレベルアップしています。従来の日産車で考えると2ランク位上がった印象すら受けます。

センターコンソールは前方から後方にかけて水平に突き抜けるように設置され、左腕を休めるのにも最適な大きさ、そしてここには大型の収納ボックスやさらに下部にも大型の収納スペースを持つなど多くの工夫が施されています。

プロパイロットも大きく進化

日産車に搭載される高速道路での同一車線走行時の運転操作をサポートする「プロパイロット」も大きく進化しました。

「プロパイロット」は専用カーナビとの連動機能によりカーブをスムーズに曲がれます

それが「ナビリンク機能」と呼ばれるもので国内初採用となります。専用ナビゲーションとの連携で制限速度の変化やカーブの大きさに応じた減速などをシステム側が行うものでドライバーの負担を軽減させるものです。

この他にも現在の日産車が搭載するADAS(先進運転支援システム)も数多く設定されています。

4WDやオーテック、そして販売上の戦略も魅力

発売は12月23日を予定している新型ノートですが、この後も4WD車や日産車のカスタムカーを開発するオーテックジャパンからも専用モデルが発売されることがアナウンスされています。

特に4WD車に関しては従来までの雪道での発進加速時のサポート程度だったものからコーナリング時にも駆動力を発生する高出力型に変更しています。2代目のモーター出力が3.5kWだったのに対し、新型は50kWということからも大いに期待できます。

また冒頭に述べたガソリン車を廃止した点に関しては個人や法人需要での落ち込みが気になります。ただ情報によれば日産は車両価格が上がったことに対し、新しい「残価設定ローン」を作ることで月額の支払額を大幅に軽減する施策を考えているようです。

もちろん電動化することで低炭素社会への貢献は期待できますが、販売上の戦略により新型ノートは爆発的に売れるのではないかと予想しています。

© 株式会社マネーフォワード