名前は世につれ

 男の子は「正一」「正雄」「正」、女の子は「正子」が上位に入っている。明治安田生命が調べたところ、大正初めの1912年に生まれた子どもは、元号にちなんだ名前が多く付けられた▲昭和は元年が7日間しかなく、昭和2(1927)年に付けられた名前を見れば、男の子が上から「昭二」「昭」「和夫」、女の子は「和子」「昭子」の順だった。新時代をたくましく生きてほしいと、遠い昔から願いが聞こえるようでもある▲平成元(89)年は1位が「翔太」と「愛」で、元号から遠ざかる。この年のトップテンは男女とも、昨年の令和元年には10位以内に入っておらず、はやりの名前は10年ほどで入れ替わるものらしい▲先ごろ、今年生まれた赤ちゃんの名前ランキングが発表され、男の子は「蒼」、女の子は「陽葵」がトップだった。それぞれ「あおい」「ひまり」などと読む▲蒼とは草の青さを言い、「蒼穹(そうきゅう)」と書けば「青い空」の意味になる。「陽」に「葵(あおい)」と、どれも自然を思わせて開放的だが、新型コロナで暮らしに我慢が多いことが影響したとみられている▲いつの世も、赤ちゃんの名前とは時代を映す鏡でもある。「あなたの生まれた年はコロナウイルスで大変でね。だから名前を…」。何年くらい先だろう。未来から親子の会話が聞こえてくる。(徹)

 


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