きょうから12月

 〈「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ〉-は俵万智さん作の有名な冬の歌だが、こんな会話もこの冬はマスク越しだ。「勝負の3週間」のさなか、暦が1枚めくれてきょうから12月▲もうこんな時期か、一年が過ぎるのは早い…と毎度おなじみの感想を持ちかけて、今年はいくらか様子が違っているかも-と思い直した。新型コロナの流行で、誰もがいつもと違う緊張感とともに過ごした2020年▲外出の予定をキャンセルして過ごす自宅、取りやめになった子や孫の帰省、「リモート」ばかりで通えないキャンパス、一向に戻らない客足-。今は我慢、と自分に言い聞かせて“長い長い一日”を重ねるうち気がつけば年末…そんな皆さんも多かろう▲多くの都道府県で新規感染者が続発する中、本県は数字が空白の日もある。県境に何かの仕切りがあるわけではない、油断は禁物と知りつつ、何とかこんな調子でこの冬を-と身勝手な願い事をしている▲冬の短歌をもう二つ。〈冬の空/針もて彫りし絵のやうに星きらめきて風の声する〉与謝野晶子。たまには夜空を見上げて気分転換▲〈湯たんぽを机の下に置きながら/けふの午前をしづかに籠(こも)る〉斎藤茂吉。冷え込みが本格化している。ステイホームも外出も暖かさ最優先で。(智)

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