MotoGP:新型コロナウイルスが感染拡大するなか、結束してシーズンを乗り越えた関係者たち

 新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年シーズンのMotoGPシリーズは全15戦での開催となった。ただし、MotoGPクラスは開幕戦カタールGPがキャンセルとなり、14戦での開催。7月中旬の再開後はヨーロッパを中心に転戦する特別スケジュールで実施され、移動のリスク低減のため、同一サーキットでの2週連続のレースが5コースで開催され、開催2コースで3週連続となるレースが4回あるという変則スケジュールで開催された。

 一部を除いて、基本的には無観客での開催とされ、報道スタッフの数も限られ、パドック内での直接取材等も原則できない状況だったという。ライダーやチームを始めとした全ての関係者は、全員がレース前にPCR検査を受け、陰性が確認された上でパドックへの入場が許される状況。パルクフェルメや表彰台でもマスクの着用が義務とされるなど、徹底的な感染対策が施された中での開催となった。

 ドルナスポーツは7月中旬のシーズン再開と、シーズンの成立をめざして徹底的なプロトコルを設定。全ての参加者はそれを遵守して臨んだ。しかし、そうした状況の中でもサンマリノGPを前にMoto2ライダーのホルヘ・マルティンが陽性となり、サンマリノGPとエミリア・ロマーニャGPの欠場を余儀なくされた。

 さらにアラゴンGPを前にMotoGPライダーのバレンティーノ・ロッシが新型コロナウイルスに罹患し、アラゴンGP、テルエルGPの2戦を欠場。Moto3ライダーのトニー・アルボリーノも陰性ながら、フランスGPからの帰りの飛行機の中で近くに陽性患者が出たことから、濃厚接触者としてアラゴンGPの欠場を余儀なくされた。

 そして、シーズン終盤のヨーロッパGPを前にMotoGPライダーのイケル・レクオナが濃厚接触者として欠場し、復帰をめざしたが陽性となり、終盤3戦を欠場することになった。また、ヨーロッパで再び感染者数が拡大して来たシーズン終盤には、チーム関係者にも罹患者が出て、陰性でも濃厚接触者として参戦できない例が見られるなど、レース以前にコロナウイルスとの戦いを強いられるシーズンともなった。

 最終戦ポルトガルGPのMotoGPクラススタートを前に、サイティングラップを終えたMotoGPライダーとチーム関係者たちはグリッド最前列に並んだ。その前方にはドルナスポーツCEOのカルメロ・エスペレータ氏が立ち、全員が拍手を始めた。これは最終戦まで到達できた関係者全員を称えるための拍手だった。

2020年MotoGP第15戦ポルトガルGP

「MotoGPのパドックにいるすべての人たちに感謝したい。2020年シーズンをやり遂げることができてとてもうれしい」とエスペレータ氏。MotoGPシリーズを運営するドルナスポーツは、困難な状況の中でシリーズを成立させるためにさまざまなことに取り組み、そして、MotoGPファミリーは短くも長く、厳しい2020年シーズンを結束して乗り越えた。

 最終戦終了直後のMotoGPクラスのオフィシャルテストこそ今年は実施されていないが、11月6日に発表された2021年の暫定カレンダーは全20戦(内1戦は開催地、日程未定)での開催を予定。

 ただし、全ての日程、イベント、観客が入れるかどうかは、新型コロナウイルス感染状況の進展と、それに対応する各国政府及び当局の承認が条件となっており、今のところ新型コロナウイルスの各国での状況次第となる。11月23日には2021年の各クラスの暫定エントリーリストも発表され、ライダーたちはすでにトレーニングを始めている。MotoGPシリーズは2021年に向けて動き始めている。

2020年MotoGP第15戦ポルトガルGP 関係者全員を称えるドルナスポーツCEO カルメロ・エスペレータ

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