首相会見

 表情が少しだけ和らいだのは、新型コロナウイルス感染予防のワクチン接種について問われ「…自分の順番が回ってきたら(私も)」と答えた時だった。会見が始まって30分が過ぎようとしていた▲臨時国会の閉会に合わせて、菅義偉首相が昨日、ようやく本格的な記者会見に臨んだ。どんな言葉で、国民に何を語るか、と注目されたが…。「棒読み」のお手本を小一時間にわたって見せられた気分-の感想は失礼が過ぎるだろうか▲「持ち前のポーカーフェース」といえば聞こえはいいが、表情は動きに乏しく、視線はずっと手元の原稿に落としたまま。「国民の命と暮らしを守るのが最大の責務」「今、大切なのは安心感と将来の希望」。強い決意が、どこまでも淡々と語られる▲「突破口を開く」「大きく一歩を踏み出す」と勢いのいい言葉もあったし、大きな金額の話もあった。しかし、残念なことに、その力強さがなかなか聞いている側の胸に迫ってこない▲分かっている。肝心なのは発信される中身だ。芝居がかった身ぶり手ぶりや豊かな表情などおまけでしかないし、それが話の無内容を覆い隠すのならむしろ有害だ。誰にだって個性も得意不得意もある。だが、それにしても…▲菅首相はあすが72歳の誕生日。劇的な変身を望むのは難しいだろうか。(智)

 


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