「魂込めた」J舞台17年 引退セレモニー V長崎・徳永「仲間大切に」

引退セレモニーで花束を持ってきた家族に笑顔を見せるV長崎の徳永=諫早市、トランスコスモススタジアム長崎

 「サッカーでできた仲間を大切に、これからの人生を歩んでいく」-。J2V・ファーレン長崎の徳永悠平(37)=雲仙市出身=は20日、諫早市のトランスコスモススタジアム長崎で開かれた引退セレモニーで、静かに、力強くあいさつした。J通算464試合出場の元日本代表DFの目は、真っすぐに前だけを見詰めていた。
 小学校から高校まで、黄色と青の縦じまに袖を通した。何度も日本一に輝いた県立国見高に、なくてはならない存在だった。早大進学後は2年時から計14年、J1のFC東京一筋で「魂を込めて戦ってきた」。外国人FWに当たり負けない強さを生かしてレギュラーに定着。戦術理解度が高く、複数の役割をこなせる点も評価された。ナビスコ杯制覇や天皇杯優勝に貢献。五輪にも2度出場した。
 その後、世界を相手に勝負してきた“鉄人”は、34歳でV長崎への移籍を決断。FC東京からの慰留を断り「故郷を盛り上げたい。体の動く今しかない」と2018年に地元へ戻った。
 それからの3シーズンは納得できる結果は残せなかった。それでも「魂を込めたプレー」は健在だった。今季は第7節京都戦のピンチの場面で、諦めずに追い掛けてスライディングタックル。1-0の勝利につながる仕事をした。手倉森誠監督も「経験者が最後まで体を張ってくれている」と称賛した。続く山口戦は頭で先制点も決めた。
 V長崎に来てからは「残り少ない現役生活でチームのために何ができるか」を自問自答する日々でもあった。だから「新しい選手の成長を手助けできるようにしたい」と指南役も買って出た。毎熊晟矢(23)ら若手にサイドバックの位置取りや基本をアドバイス。将来有望な選手たちに「J1昇格」の夢を託した。
 引退セレモニーのフィナーレで、関係者からのメッセージを照れくさそうに聞き、やりきった表情で家族や仲間と記念撮影した。「ここまでプレーできたのは、本当に多くの人に支えていただいたおかげ」。ぶっきらぼうに見えるけれども、本当は優しい人格者。Jの舞台で17年にわたりチームのために走り続けた男は、最後まで自らのスタイルを貫いて、ピッチに別れを告げた。


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