来年度予算案閣議決定 ダム、新幹線など長崎県関連費用も 知事「要望事項が反映」

 政府が21日閣議決定した2021年度予算案には、離島の振興やダム、新幹線、干拓などの公共事業、佐世保の基地への対応、被爆者援護など長崎県が抱える課題に対応する費用も多く盛り込まれた。主なものを紹介する。

◎「ワーケーション」やチャーター誘客推進/内閣府
 
 ▽国境離島新法
 概算要求で12億円増の62億円を要求したが、20年度と同じ50億円で落ち着いた。運賃低廉化や輸送コスト軽減、雇用機会の拡充、観光振興に沿った施策を展開する。旅行先で仕事をする「ワーケーション」の推進やチャーター便を使った誘客なども進める。
 15日に閣議決定された第3次補正予算案では、国境離島を目的地とした旅行商品について、1人1泊5千円の支援策を盛り込んだ。体験メニューを組み込む条件でこれまでも支援策はあったが、さらに行きやすくするため条件を外して地元経済の下支えを図る。

◎被爆者 介護保険の助成拡大/厚生労働省
 
 ▽被爆者、平和活動
 被爆者が利用する介護保険サービスの助成対象にグループホームを新たに追加した。これまでは通所介護などに助成してきたが、被爆者団体からの要望を受けて対象を拡大した。被爆者の減少に伴い年々減少している被爆者援護対策費は、20年度比36億円減の1183億円となった。
 被爆体験の伝承事業として、被爆者ではないが長崎、広島で語り部をしている人を国内外に派遣する費用に5千万円を計上。被爆体験の継承に努める。

◎崎辺東地区整備に133億円/防衛省
 
 ▽海上自衛隊佐世保基地
 佐世保市の崎辺東地区に大型岸壁や補給倉庫を整備する費用として133億円を盛り込んだ。岸壁は海自最大の「いずも型」護衛艦(1万9950トン)や、水陸両用車などを搭載できる「おおすみ型」輸送艦(8900トン)が係留できる見通し。29年度ごろの完成を目指す。
 米海軍佐世保弾薬補給所(前畑弾薬庫)の移転・返還関連では、移転先となる針尾島弾薬集積所(針尾弾薬庫)への工事用道路の基本設計費として約1億7600万円を充てる。

◎新鳥栖-武雄温泉 アセス費計上せず/国土交通省
 
 ▽本明川ダム
 諫早市に直轄ダムとして計画する本明川ダムは、20年度当初から11億7600万円増の53億4千万円を確保。付け替え道路の建設費や用地補償費が増えた。予算額は年々増加しており、一般的には本体工事に入るとさらに額が膨らむ。
 ▽九州新幹線長崎ルート
 整備方式が決まっていない新鳥栖-武雄温泉の環境影響評価(アセスメント)費用は、地元佐賀県との協議が難航しており、計上を見送った。長崎-武雄温泉の自治体負担を含めた建設費は、工事のピークが過ぎたため140億円減の610億円となった。

◎有明海再生対策 例年と同規模に/農林水産省

 ▽諫早湾干拓事業
 開門しない代わりに創設する有明海再生に向けた基金の経費は20年度同様見送った。和解協議に進展がないことが理由。有明海特措法に基づく再生対策の関連事業は例年と同規模の約18億円を盛り込んだ。本県など有明海沿岸4県でタイラギやアサリの生息環境調査などに取り組む。

 中村法道知事は、2021年度政府予算案が閣議決定され、新型コロナウイルス感染症や地方創生、国境離島、少子化などへの対策が盛り込まれたことに「これまで、国会議員や県議会議員、市町、関係団体と一体となって要望してきた事項が反映された」との談話を発表した。
 談話で中村知事は地方財政への手だてやデジタル化の推進、生産性向上に向けた事業などが盛り込まれたことを評価。「今後も情報収集に努め、国の予算を最大限活用したい。新たな県総合計画がスタートすることを踏まえ、積極的に施策を展開していく」とした。

© 株式会社長崎新聞社