年賀状、見直される?

 江戸の昔、武士や商人は、近くの人には使者を送り、遠くの人には飛脚を使って、年始のあいさつ状を届けた。年賀状の“原型”らしいが、庶民に広まったのは明治期だった▲明治の終わりに、前もって投函(とうかん)された年賀状を元日に配達する形ができて、正月に欠かせないものになったという。十数年前がピークで、昨年の発行枚数は40億枚を超えていた最多時の半分にも満たない▲新年あいさつをメールの類いで済ませたりと“敬遠”の訳はいろいろありそうだが、ちょうど今が投函の時期の年賀状は、少し見直されている。里帰りの代わりに実家に送るという人が多いらしい▲富士フイルムが全国の子育て世代に尋ねたところ、この年末年始の帰省に代えてやりたいことは「家族写真付き年賀状を送る」がトップだった。「メールなどを送る」「テレビ通話などで話す」よりも多い▲写真付きならば形に残せるし、飾ることもできる。新型コロナの影響で来るに来られない子や孫の笑顔の写真に、じっと見入る人たちはきっと多いことだろう▲長い長い年賀状の歴史の中で初めてに違いない。年始のあいさつというよりも「贈り物」と呼ぶのがふさわしい賀状が年明けの列島を行き交う。「感染拡大」の文字ばかり見るためか、「家族写真」の4文字が心をいっそう和ませる。(徹)


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