コロナ禍の2020年、なぜ中古マンションの売れ行きが好調だったのか? 人気の物件にはある共通項が――

人々の生活スタイルが大きく変わった2020年。「住まい」に対する考え方も大きく変わり、人々がマンションに求めるニーズも変化してきました。立地条件、共用施設、周辺環境とさまざまな点でマンションの評価ポイントが変わり、意外な物件が人気を集めてきているようです。なかでも中古マンションのニーズが高まってきているそうですが、どんな理由があるのでしょう? 不動産のスペシャリストにお伺いしました。

コロナ禍でもなぜか、中古マンションは人気が衰えなかった2020年。なぜ、売れ行きが好調だったのでしょうか? 不動産コンサルタントの岡本郁雄さんは次のように分析します。

「新型コロナウイルスの感染拡大にともない、私たちは生活スタイルの変化を余儀なくされました。在宅勤務が増えたことで、これまでの間取りでは手狭に感じた人もいれば、家族全員で過ごすにはもっとストレスのない環境を確保したいと考えた人もいるかもしれません。こうした“今の家に対する不満”は住み替えニーズの高まりにつながります」

ひと口に住み替えといっても、その実現方法はさまざまです。例えば、賃貸物件から別の賃貸物件に移ることもあれば、賃貸物件からマイホーム購入に踏み切る方法もあります。住み替え先として、新築と中古どちらを選ぶのかも、価値観が問われるところです。

コロナ禍における中古マンションのメリット

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マイホームという枠で考えたとき、新築マンションに比べ、中古マンションは住み替えまでスピーディに進展するのが特徴です。気に入った物件が見つかれば、完成を待たずにすぐ住み始められるため、コロナ禍の「今すぐ、生活環境を変えたい」「新しい生活様式にあった住環境を手に入れたい」というニーズにピタリとハマったのではないかと、岡本さんは推測します。また、2020年は「人気がある物件」の条件にも、コロナ禍の影響が色濃く反映されていたと言います。

「リモートワークの普及で、それほど都心に住む必要性はないが、ある程度の利便性はほしいというニーズが高まり、“通勤に便利な郊外エリア”のマンションが注目されました。ほかに、共用施設が揃った大規模マンションが人気になっています」

例えば、「パークシティ豊洲」は2008年築・総戸数1481戸の大規模マンションですが、商業施設「ららぽーと豊洲」との一体開発が行われてきました。豊洲駅直結オフィスビルである「豊洲ベイサイドクロス」が開業したことによって、駅から雨に濡れずに行き来できるようになり、さらに人気が高まっているとか。

同じく2015年に建てられた「スカイズタワー&ガーデン新豊洲」も、豊洲エリアで根強い人気を誇る物件のひとつ。ジムやプール、ジェットバス、スカイラウンジ、天体観測ドームなどの共用施設が充実しているほか、認定こども園も併設されており、生活環境としても大充実しているのです。

「売れている中古マンションの共通項を上げるとすると、近隣の公園や商業施設の充実があげられます。電車移動しなくても、家の近所であらゆる用事を済ませようと思えば済ませることができる。マンションを購入する世代は、ちょうと子育てをしているか、あるいはこれからの子育てを見据えて、子育てをしやすい環境を選ぶ傾向は依然として続いています」

新築マンションの高騰で「中古+リノベ」物件もじわじわ人気に

また、中古マンション人気の背景には、新築マンションの価格が大きく上がっていることが挙げられると、岡本さんは指摘します。

国土交通省がまとめる「不動産価格指数」を見ると、2010年と比較してマンション(区分所有)の価格上昇は150%を超えるほど。原因はアベノミクスの影響や建材・施工費の高騰など諸説ありますが、マンション価格が右肩上がりの結果、少しでもリーズナブルな価格で物件を購入したい層が中古マンションを選ぶというメカニズムが働いていても不思議はありません。

「平成以降に建てられた社宅や団地がリノベーションされ、家族世帯向けのマンションとして供給されるケースも、じわじわ増えてきています。“中古マンションは新築マンションと比べて、設備面や防犯面で不利なのでは”と気にする人がいますが、リノベーション物件では竣工時には導入されていなかった最新設備が取り付けられているのも、リノベーション物件の魅力だと言えるかもしれません」

なお、中古マンションを見極める際には「築年数」も要チェック。リーマンショック以降、地価が下がり、マンションの売れ行きが低迷し、さらに2011年の東日本大震災で耐震構造など防災への意識が高まった時期を経ている2014年~2015年築の物件には、優良物件が多くあるそう。

バブル期もそうでしたが、地価が跳ね上がっている時期はコストを抑えるために仕様をダウンさせるケースも。飛ぶように売れる時期は物件も玉石混交なので、よく見極める必要があります。一方、あまりマンションが売れていない時期につくられた物件は、商品企画がよく練られていて、必然的にクオリティが高い物件が多いのだとか。

「自分価値」を重視した快適に暮らせる住まいを

「売り手はもちろん、買い手の心理にも時代の影響は色濃く反映されています。例えば、大規模マンションの人気が高いのには『できるだけ、資産価値を下げたくない』という思いの現われでもあります。家を購入するにあたって、資産価値へのこだわりは年々強くなっている印象があります。

マイホームとして購入し、手放さない前提であれば、資産価値にこだわるよりも、どのような暮らしを実現したいかを重視したほうがいいはず。逆に言うと、将来値上がりするかどうかを気にして物件を選んでも、住み替えをしなければ、そのメリットは享受できないのです。投資用のマンションを買うという場合は別として、住宅用マンションの購入であれば、その点は冷静に考える必要があるのではないでしょうか」

コロナ禍によって否応なしに生活が変わり、理想の暮らしのありようにも変化の兆しが訪れた2020年。時代の変化を翻弄されすぎず、“自分たちらしい暮らし”をマイペースに考えることが大切なのかもしれません。

取材・文:島影真奈美

不動産コンサルタント 岡本郁雄

ファイナンシャルプランナーCFP®、中小企業診断士、宅地建物取引士、公認 不動産コンサルティングマスター。不動産コンサルティング会社などを経て2004年に独立。不動産領域のコンサルタントとして、マーケティングやコンサルティング、住まいの選び方などに関する講演や執筆、メディア出演など幅広く活躍中。神戸大学工学部卒。

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