細かなメモ、厚い信頼 チーム支える「学生コーチ」 創成館・蕪木

県大会決勝で選手たちに給水ボトルを渡す蕪木(中央)=諫早市、トランスコスモススタジアム長崎

 創成館のベンチに、サングラス姿でアドバイスを送る部員がいる。
 学生コーチの蕪木慶(18)は約1年前、目の病気で選手生命を絶たれたが、部に残ってサポート役を買って出た。「サッカーができなくなって悩んだけれど、今はこういう存在もありかなって感じている」。監督の指示、自ら気付いたことを書き留めてきた「メモ」は、チームに不可欠なバイブルとなっている。
 山里中時代は長崎市のクラブチームでMFやDFとして活躍。生き生きとプレーする創成館のスタイルに憧れて、進学先に選んだ。「自分たちの代で絶対に全国に行く」。そう心に誓って、仲間たちと汗を流していた。
 異変に気付いたのは昨年11月。動くボールが二重に見えたり、ぼやけたりする日が続いた。病院に行くと「翼状片」という病名を告げられた。日差しが強い場所ではサングラスが欠かせなくなり、目いっぱい競技を続けられなくなった。
 突然のことでショックも大きかったが、サッカーがない日常は考えられなかった。何か力になれることはないかと久留監督に相談。「学生コーチ」の役目を与えられた。
 自チームや相手チームの分析にペンを走らせ、きちょうめんな文字でびっしりと埋められたノートは、気が付けば9冊目に入った。自ら呼び掛けて選手だけのミーティングも開き、培ってきた「見る力」と「考える力」を仲間たちに落とし込んできた。
 その献身的な姿勢に対する信頼は厚い。久留監督は「自分と生徒の間に入って、うまくチームをまとめてくれている」と高く評価する。本人も「ぶつかり合うこともあったけれど、チームがいい方向に進んで自信がついた」とやりがいを感じている。
 学生コーチを始めた当初、ノートに記した目標は「国見や総付(長崎総合科学大付)を倒して全国に行く!」だった。達成した今、新しいページにさらなる目標をでかでかと書いている。
 「全国ベスト4! ジャイキリ!」
 番狂わせを起こすための戦い方は、しっかりとノートにまとめている。

 


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