「ヒッチャー」が愛されている理由は、ルトガー・ハウアーの演技のおかげ ロバート・ハーモン監督インタビュー

サイコ・スリラー映画「ヒッチャー ニューマスター版」の劇場公開にあたり、監督を務めたロバート・ハーモンのインタビューが公開となった。主演のルトガー・ハウアーなどについて答えている。

謎のヒッチハイカーを演じたルトガー・ハウアーについては、「この役を演じるために生まれてきたことは、関係者の誰の目にも明らかでした」と絶賛。襲う相手の青年に対して「自分の息子のように扱うよう」に頼んだことを明かし、「この映画がこんなに長く愛されているわけは、このコンセプトを基にしたルトガーのおかげなのではないかと思っています」と、ハウアーの功績を称えている。

「ヒッチャー」は、謎の殺人ヒッチハイカーをルトガー・ハウアーが怪演したことで知られる作品。殺人ヒッチハイカーを乗せたばかりに、逃げても逃げてもひたすら狙われ続ける青年の恐怖と絶望を、派手なアクションの連続で描いている。クリストファー・ノーランがハウアーの演技を絶賛し、J・J・エイブラムスも「10 クローバーフィールド・レーン」の製作時に影響を受けたことを語るなど、後世に影響を与えた。

■インタビュー

Q. それぞれのキャストはどんな理由で選ばれたのですか?

基本的に3人しか出てこない映画ですから、通常よりもキャスティングの重要度が大きかったと思います。通常の場合でも、キャスティングは本当に重要ですから。ルトガー・ハウアーがこの役を演じるために生まれてきたことは、関係者の誰の目にも明らかでした。はっきりと言えるのは、今日こうして35年前の映画の話ができるのも、ルトガーがこの役を演じると決心してくれたからです。

Q. メインキャストの3人に、当時どんな印象を持たれましたか?

ルトガー・ハウアーのことは、もちろんよく知っていました。 彼のオランダ時代の映画(ほとんどがポール・バーホーベン監督の作品)のことはよく知っていましたし、ちょうど『ブレードランナー』(82)の撮影を終えたばかりでした。 そんな彼と一緒に仕事ができるというので、ワクワクしました。
ナッシュを演じたジェニファー・ジェイソン・リーはご存知の通り、後に素晴らしいキャリアを積むことになるのですが、当時はキャリアの初期段階にいました。彼女のことは『初体験/リッジモント・ハイ』(82)や『グランドビューU.S.A.』(84)などの映画で知っていましたし、一緒に仕事ができるのが本当に楽しみでした。また偶然にも、彼女がバーホーベン監督の『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』(85)の撮影を終えたばかりだったことも知っていました。この映画は『ヒッチャー』のキャスティングが行われていたときにはまだ公開になっていませんでしたが、ジェニファーとルトガーが知り合いで、お互いに相手を気に入っていたと聞いて、良い兆しだと思いました。
C・トーマス・ハウエルも、ジェニファーと同じように、キャリアの初期段階にいました。『アウトサイダー』(83)や『若き勇者たち』(84)に出演した俳優としてよく知っていました。彼をキャスティングできて一緒に仕事をすることができたのも、信じられないほどの幸運だったと思います。

Q. 演技に関し、ハウアーさんに何か要望はありましたか?

ルトガーに、ジム・ハルジー(ハウエル)を自分の息子のように扱うよう頼みました。ルトガーはこのアイデアをとても気に入っていました。このコンセプトを念頭に置いて映画をご覧いただければ、役者の演技のいたるところにそれが反映されているのがお分かりいただけると思います。抑えた演技ですが、大変効果的な演技です。私は実のところ、この映画がこんなに長く愛されているわけは、このコンセプトを基にしたルトガーのおかげなのではないかと思っています。

Q. カーチェイスや爆発といったダイナミックなアクションから緊張感ある俳優の演技まで、様々なシーンがありますが、特に印象に残っているシーンはありますか?

ジムとナッシュを追いかける警官がショットガンを発射し、誤って自分のタイヤを撃ち抜いて起こる2台の車の横転シーンは特に大変でした。カメラを大量に配置しなければなりませんでしたし(確か9台だったと思います)、すべてのタイミングを合わせなければいけず、難しかったです!
ノンアクションシーンでは、ルトガーがC・トーマス・ハウエルとカフェで向かい合って座るシーンが特に好きです。C・トーマスの目に2ペニーが置かれることになるんですが。私にとって、このシーンは本当に効果的で、2人の関係が進展する途中に入れるのにぴったりのシーンだったんです。

Q. ジョン・ライダーとジム・ハルジーの関係は独特です。ジョンに対するジムの気持ちが少しずつ変化していきます。ジョンがジムを好いているようにも見えます。2人の関係を撮影する際に、どんなことに気をつけられましたか?

特に気をつけたのは、この映画を「悪人とヒーロー」という単なるジャンル映画にはしない、ということでした。2人の登場人物が、なんらかの「死闘」で単にぶつかり合うような映画のことです。明らかにこの映画でも、前半くらいまではそうした要素がたくさんあります。ですがその後、ジョンが自分に何を求めているのかをジムが次第に理解し始めるにつれ、物語は変わり始めます。

Q. 35年ぶりの劇場公開に胸を躍らせる日本のファンへメッセージをお願いします。

日本のファンの皆さん、ぜひお会いしたかったです!私は日本に行ったことがありませんし、行ってみたいと思っています。本当なら今回の日本公開が良い口実となったはずなんですが!『ヒッチャー ニューマスター版』、楽しんでいただければと思います。そして、初公開から何年も経つこの作品に今でも興味を持っていただいて、どうもありがとうございます。

ヒッチャー ニューマスター版
2021年1月8日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
配給:アンプラグド
© Filmverlag Fernsehjuwelen. All rights reserved.

© 合同会社シングルライン