2020年、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたお盆の伝統行事、精霊流し。例年、多くの観光客でにぎわう長崎市では、関係者らが3密回避策を取りながら、故人の霊を西方浄土へ送った。コロナ禍で初盆を迎えた人々の葛藤や、自治会独自の取り組みを後世に伝えようと、元長崎学研究所長の土肥原弘久さん(63)=鍛冶屋町=が「令和2年の長崎精霊流し コロナ禍における夏の風物詩」(A5判、58ページ)を自費出版した。
土肥原さんは「50年後、もし同じ惨禍が起こったときに参考にしてもらいたい。長崎の伝統行事に理解を深めるきっかけにしてほしい」と話している。非売品で、県内の公立図書館などで閲覧できる。
長崎くんちなどの伝統行事に詳しい土肥原さんは、15年ごろから長崎の精霊流しについての研究も始めた。コロナ禍に見舞われた20年の精霊流しの記録を残そうと出版を決意。5月から市内の自治会や個人を取材した。
20年は、合同で故人を送る「もやい船」についても、自治会の対応は割れた。例年の半分の人数で船を引き、県外からの帰省者は参加を見送った自治会もあれば、従来の船の製作を取りやめ、軽トラックの荷台に町名などを掲示した「精霊自動車」で対応した例もあった。こうした様子を50枚以上の写真を使って、分かりやすくまとめた。1879年に感染症の流行に伴い、精霊流しが中止になった歴史なども紹介している。
150部発行し、県内全ての公立図書館や大学図書館などに寄贈した。
コロナ禍の精霊流しを後世に 元長崎学研究所長 土肥原さん出版
- Published
- 2021/01/05 23:35 (JST)
- Updated
- 2021/01/06 14:56 (JST)
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