日清のCMが若者に大受けのワケ 社長のモットーは「お客さまが楽しんでくれるならいい」

CM人気の秘訣を語った米山氏

老舗企業のCMが若者を中心にネット上で大ウケし続けている。日清食品のCMだ。なぜ若者にウケるCMを出し続けられるのか? その秘訣を「日清食品ホールディングス」宣伝部部長、米山慎一郎氏に聞くと、意外な制作秘話が飛び出した。

昨年、話題になったのは早見優がヒット曲「夏色のナンシー」(1983年)のメロディーに乗せて「イカかな~(yes)、イカじゃな~い(yes)」と歌い、麺をかきこむ「シーフードヌードル」のCMだ。

シュールな絵と曲が流れ、最後に橋本環奈が一瞬だけ映る「カップヌードル旨辛豚骨」など、インパクトがあるCMを流し続ける日清食品。グーグルで「日清 CM」と検索欄に入れると、予測ワードに「やばい」と出るほど、この路線が人々に印象付けられている。

実は日清食品のCM出稿量はトップ50にも入らない。「最近はずっと60位ぐらいです」(米山氏)。記憶に残るのはインパクトがあるからだ。一体どのように決めているのか?

「週に1度、日清食品の社長である安藤徳隆と宣伝部22人が集まって定例ミーティングを開き、そこで全て決めています。社内で議論したときにドッと沸くものは世に出してもウケます。盛り上がらなかったら、その場でボツです」

なんと創業家3代目の安藤社長が自ら加わって、CMの内容を決めているという。米山氏によれば、安藤社長は「映画や漫画に詳しく、サブカルチャー全般への造詣が深い。社長は引き出しの数がとても多いので、面白いアイデアが次々と飛び出してきます」という。

例えば、2016年に発売されてバカ売れした「カップヌードル ビッグ 謎肉祭(なぞにくまつり)」。ネット上で「謎肉」と呼ばれていた、豚肉と大豆などを混ぜた〝味付豚ミンチ〟を大量に入れた商品を発売する際、商品名を決めたのは安藤社長だった。

「最初の商品名は『ミートショック』でしたが『ネットで謎肉と呼ばれて盛り上がっているのなら、それがいっぱい入っている商品は〝謎肉祭〟のほうが面白い』と」

「謎肉」という言葉は、揶揄的な意味も含めてネットで流通していたが、あえて商品名にしたインパクトもあり、1か月分が3日で売れ、販売を一時休止する大ヒットになった。

「『お客さまが楽しんでくれるならいいじゃないか』という社長の考え方のおかげで、自由度が上がったように感じます。ブランドコミュニケーションのあらゆる部分を消費者目線で考え、CMはもちろん、ツイッター投稿文の〝てにをは〟にまで目を光らせています」

安藤社長は定例ミーティングで案件を持ち帰ることをせず、即興的にその場でアイデアを考え、どんどん決める。

「だから『どうしたら面白くなる?』と聞かれた時に、宣伝部員はすぐに答えられるようにしておかなきゃいけない。私も含めて宣伝部員は一日中アイデアのタネを探していますから、けっこうしんどいです(笑い)」

面白いCMの裏には、もっとおかしなこと、変わったことをやろうと発破をかける社長と、消費者を楽しませるために日々頭をフル回転させている宣伝部員がいた。

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