学園の創立130周年を記念して記者説明会を開催

麻布大学は2020年9月10日に学園として創立130周年を迎えた。これを記念し、同年12月17日に「麻布獣医学園、創立130周年記者説明会」が開催された。

浅利昌男理事長・学長による挨拶からはじまった説明会では、まず学長補佐である生命・環境科学部環境科学科の関本征史准教授より、「麻布未来プロジェクト130」についての紹介が行われた。当プロジェクトは、麻布大学の教育理念「地球共生系 One Health」を軸に、Society5.0時代に向けた人材育成の強化をめざすもので、全学共通のデータサイエンス教育の推進を中核に5つの改革を順次、実施していくものである。

すでに2020年1月には、これまでに培ってきた専門知識教育に加え、データサイエンス教育を推進していくことで、その知識・情報(データ)を活用できる『時代を先導する人材』の育成を全学部・学科で行っていく、改革1:「データサイエンス教育の推進」を公表した。同年2月には、全学共通の授業科目群「地球共生系教育科目群」を設置することで、「人、動物、環境」をテーマとした特色ある教育の進化をはかる、改革2:「麻布大学の特色を活かした教育の推進」を公表した。今回の説明会では残る3つの改革について、その内容が発表された。

まず、改革3:「初年次教育・キャリア教育の拡充」については、「HACCP管理者研究カリキュラム」「食の情報分野」の導入、「未来共生科学×SDGs」の推進など、学部・学科の特性を活かした新教育プログラムを展開する。国家試験受験資格以外にも、食品や環境、動物などにかかわる各種の資格取得について、学部・学科の枠を越えて資格を取得できる環境を整備し、卒業後のキャリア形成の支援強化がはかられる予定だ。

次に改革4:「ゆとりをもった学修日程の設計」では、従来、基本単位2単位の授業で1日当たり2コマ50分授業を半期「15回」実施してきたものを「14回」に短縮することに加え、再試験期間(前・後期約1週間)を廃止する。これにより夏季・冬季の休業期間を3~4週間増加させ、学生たちに長期インターンシップや課外活動、研究活動への参加をうながしていく。

改革5:「市民に開かれた教育の推進」については、社会人再教育へのニーズが高まっている社会情勢を受けて『麻布大学発の教育セミナー』を開催するなど、リカレント教育の強化・拡充を推進する。HACCPシステム管理者養成研究への卒業生、社会人の受講受け入れ、海外でのHACCP研修の実施についても報告が行われた。

また、これに合わせて、新型コロナウイルス感染症の蔓延を防ぎつつ、学生の希望に合わせた新しい教育を展開していくため、Google™の「G Suite Enterprise for Education」を全国の大学ではじめて導入した事例や、オンライン授業の実施など、「with コロナ時代の教育体制整備」についても発表が行われた。

「麻布未来プロジェクト130」の紹介に続いて行われたのが、学校法人麻布獣医学園理事で獣医学部長の村上賢教授と、ヒトと動物の共生科学センター長で獣医学部動物応用科学科の菊水健史教授による、「知識集約型社会を支える人材育成事業」への麻布大学の取り組みに関する説明である。

当事業は、Society5.0時代などに向け、全学横断的な改善の循環を生み出すシステムの学内形成を実現しつつ、今後の社会や学術の新たな変化や展開に対して柔軟に対応しうる能力を備えた人材を育成することを目的に、2020年6月より文部科学省が公募を実施したものである。

募集が行われた2種類の教育プログラムのうち麻布大学が申請したのが、特定の分野で特に優れた資質を有する学生に早期からさらに高い水準の教育機会を提供し、その才能の一層の伸長をはかることで、知識集約型社会において日本をけん引していく人材を養成するカリキュラムを構築し、学内および他大学に普及・展開するプログラムを対象とした「メニューⅡ 出る杭を引き出す教育プログラム」である。今回の説明会では、同年11月に当事業に採択されることとなった「動物共生科学ジェネラリスト育成プログラム」に関する紹介が行われた。

まず、プログラム名に冠された「動物共生科学ジェネラリスト」とは、麻布大学に設置された各学科の領域の専門性を深化させる「専門コア力」、これに並行して関連領域の知識と問題解決手法を獲得する「広範展開力」、自身の専門性を活かしながら関連領域と連携することで新しい実社会の形成にかかわることのできる「実践力」をもちあわせた人材である。同大が展開しているSDGsにかかわるヒト、動物、食品、環境の専門性を活かすことで、これらの力を養い、社会的要求にこたえる人材を育成していくことが、その目標とされている。

そして、当プログラムの大きな特徴としては、高校・大学・大学院が有機的な連携をとることにより、高校生の時点での大学講義の履修、学部生の時点での大学院講義の履修を促進させるなど、時空間を超えた修学のチャンスを提供する。修士課程の早期終了を実現することにより、通常の修士課程取得者と比べ、プログラム参加者には就職後に1年間の時間的なメリットをもたらす。

また、STEM型教育を導入し、修学カラーマップやStepGPAなど、学生が自身の修学の特性を知るために学びの見える化を促進する取り組みも実施する。さらに、菊水教授がセンター長をつとめる「ヒトと動物の共生科学センター」を筆頭に、2021年より運営開始が予定されている「データサイエンスセンター(仮)」「フィールドワークセンター(仮)」では、先駆的な研究に取り組むプロセスから、社会実装力を身につけられることも紹介された。

これらの発表のあとには、麻布大学が取り組んでいる研究などについて参加者からの質疑応答、個々の出席者との情報交換会などが行われ、「麻布獣医学園、創立130周年記者説明会」は盛況のうちに終了することとなった。

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