「これからなのに」「見放された気分…」 長崎で時短営業スタート 休業も目立つ

常連客を見送る松下さん(左から2人目)ら=20日午後7時57分、長崎市船大工町の居酒屋それいけコケコッコー

 新型コロナウイルス感染拡大抑止策として長崎県が県内全域の飲食店に要請した19日間の営業時短期間が20日、始まった。長崎市の歓楽街、思案橋と銅座は人通りが激減し、休業に踏み切る店も目立った。多くは午後8時、一斉に店じまい。酔客からは「楽しめない」と不満が漏れ、それ以降も営業を続ける店もあった。
 「早く注文せんば。あと14分よ」。カウンターの女性客5人が声を上げた。「居酒屋それいけコケコッコー」は営業時間を同3時~8時に前倒し。テークアウトも始めた。40代客は「これから飲みたくなる時間なのに」とグラスを傾けた。7時、店主の松下光徳さん(59)は酒の提供を止め、1時間後に看板の電気を消した。「こういう状況なのですみません。頑張りますけん」。真っ暗な通りに消えていく客を見送った。
 「ぎりぎり間に合った」。7時半、中華レストラン「よこはま」でちゃんぽんを注文した作業服姿の男性2人は、一気にスープまで飲み干した。「これからが稼ぎ時なんだけどね」。マスターの遠藤祐國さんはそうぼやきつつ、「創業64年、長崎大水害も長崎砂漠も乗り越えた。意地でも休まないよ」と笑った。
 日中は県市職員が各店を回り、協力を呼び掛けた。時短や休業の告知に使える定型用紙を受け取ったスナック経営の女性(51)は早速ドアに張り出した。「休んだ方が感染の恐れがなく安心」。別のスナック経営女性は「7時からはお茶を出せって言うの?」と職員に不満をぶつけた。
 あるラウンジは8時以降も営業を続ける。オーナー(56)は「休業すれば接客スタッフは収入がなくなる。お客さんが少ないのは承知の上、少しでも彼女たちの助けになれば」。席数を半減し予約限定に。客とスタッフは酒を飲む瞬間だけマスクを外していた。
 通りはカラオケの音も聞こえない。空車のタクシーが所在なげに行き交う。20代男性会社員2人組は「まだ飲みたりない」。男性客(39)は「感染が収まるなら協力する」と家路に就いた。時短要請対象外で協力金を受け取れない果物屋の70代女性の表情は暗い。「私たちも街を支えているのに。見放された気分よ」

県の担当者から時短要請の説明を受ける中華レストランよこはまの関係者(左)=20日午後4時44分、長崎市本石灰町

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