収蔵4万点超、廃棄へ 台風で浸水の川崎・市民ミュージアム

台風19号で浸水し、岐路に立つ川崎市市民ミュージアム=同市中原区(写真は2018年当時)

 2019年の台風19号による川崎市市民ミュージアム(同市中原区)の地下収蔵庫浸水被害を巡り、市は21日、被災した収蔵品約22万9千点のうち、写真雑誌や漫画など約4万2千点を廃棄処分すると発表した。被災後に修復を試みたが、状態がひどく、複製印刷物が存在するなどとして判断した。収蔵品の廃棄は初めてで、カビが繁殖しやすい夏前には焼却処分したいとしている。

 市は昨年7月、収蔵品の修復に当たり、被災状況がひどく複製品が他の施設で確認できるものや、原型に戻すことが困難な場合には廃棄処分にすると定めていた。今回、この運用基準に基づき処分を決めた。

 廃棄されるのは、企画展に向けて委託製作したわら人形「ソキサマ」など4体や写真雑誌「アサヒグラフ」「LIFE」など写真関連の計約4800点。漫画関連では、雑誌「週刊少年マガジン」や単行本計約3万6300点など。いずれも地下収蔵庫に置かれていた。写真雑誌や漫画雑誌の一部は寄贈品で、寄贈者や遺族に了解を取ったという。

 市は今後も修復を進める中で、処分せざるを得ない収蔵品は出てくるとしている。市民文化振興室の白井豊一担当部長は「全作品をレスキューする方針で進めてきたが、修復できないものが出たことは市民にも寄贈者にも大変申し訳ない」と話した。

 約22万9千点の修復作業を巡っては、昨年12月25日現在で修復済み約540点、修復中約2千件、応急処置済み約5万件にとどまっており、完了時期は見通せない状態となっている。

© 株式会社神奈川新聞社