長崎市長 医療危機で要請 400超の病院・診療所 役割分担、連携を

 新型コロナウイルスの感染拡大で医療崩壊の危機にあるとして田上富久長崎市長は25日、一般患者とコロナ患者を受け入れる医療体制を維持できるよう、市内の400超の病院・診療所に役割分担と連携への協力を文書で要請した。
 同市を中心とする長崎医療圏では昨年暮れから医療機関などでクラスター(感染者集団)が相次ぎ、感染者が急増。今月中旬には専用病床125床のうち約9割が埋まる事態となった。
 市内の公的4病院では高度急性期・急性期の約450床を休止し、コロナ患者にマンパワーを注力。さらに複数の医療機関でクラスターが発生し新規入院を中止したため、急性期病床が大幅に減少。一般の急性期患者が入院できない状況も起きているという。
 市長は急性期医療機関で空き病床をできるだけ確保するため、初期診療を終えた患者を回復期や慢性期を担う医療機関で積極的に受け入れるよう要請。高齢者施設から患者を急性期医療機関に救急搬送する前に、入院の必要性を適切に判断することも求めた。
 民間医療機関に対しては、公的医療機関が新規のコロナ患者の治療に集中できるよう、感染疑いのある患者や退院基準を満たした人を受け入れるよう検討を要請した。
 市によると、コロナ患者を受け入れる病院の専用病床が逼迫(ひっぱく)したため、クラスターが起きた病院の陽性患者を転院させられなかったケースもあった。今後も感染爆発期には同様の事態が起きる可能性があるとして、各医療機関で感染者のいる区域とそれ以外を分ける「ゾーニング」などの準備が必要としている。また高齢者施設などでクラスターが起きた場合、受け入れ医療機関への看護師らの派遣を求める可能性があるという。
 現在、長崎医療圏の感染者数は一時期ほど多くなく、24日時点で専用病床の占有率も6割まで下がった。市の担当者は「今後クラスターが起きれば占有率が再び9割まで上昇する可能性はあり、多くの病床を確保できるよう体制を整えておきたい」と話した。


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