10代の妊娠相談、コロナで急増

“巣ごもり”影響か

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 新型コロナウイルス感染拡大の影響で全国的な妊娠の数が減少する中、10代を中心に若者の妊娠相談が急増している。自粛生活の影響により、若者の予期せぬ妊娠や性被害が増えた可能性があり、厚生労働省の研究班は人工妊娠中絶に至る理由の背景や経緯について全国調査を実施。詳しく背景を分析することで、より有効な女性支援策につなげる。 (共同通信・高砂しおみ)

電話対応するNPO法人「みっくみえ」の相談員=2020年11月、三重県内、提供写真

 ▽10代が9割

 「休校中、彼氏と毎日セックスした。妊娠が心配だ」。三重県のNPO法人「みっくみえ」にこのような電話相談が寄せられたのは2020年6月。松岡典子代表は「この頃からコロナの影響か、相談の増加が目立ってきた」と振り返る。

 松岡代表によると、緊急事態宣言下を含む2020年4~10月の電話相談件数は2019年の1年間分を超えた。約半数が10代といい「宣言中は、学校や部活がなくなり、これまで会員制交流サイト(SNS)を使っていなかった子が利用して、知らない人に会い性被害に巻き込まれるケースもあった」と話す。

 宣言が解除され学校が始まった後も相談は減らなかった。夏休み中や10月以降は例年を上回る件数が寄せられ、「外出自粛の反動なのか、外出する機会が増え、トラブルに巻き込まれている可能性がある」とみる。

 みっくみえは、電話に加え2020年6月から本格的に無料通信アプリLINE(ライン)相談も始めた。LINEに限ると10代が約9割を占める。最近は自身が妊娠した事実にきちんと向き合うことができず、相談できないまま中絶可能な時期を過ぎてしまう子もみられるという。松岡代表は「まず誰かに話すことで次のステップに進める。若年者は相談のハードルをいかに下げられるかが鍵で、SNSを活用した相談は有効だ」と強調した。

 ☆みっくみえのアドレス http://micmie.jp/

 ▽氷山の一角

 相談内容が深刻化していると指摘するのは、妊産婦や母親を支援する東京都のNPO法人「10代・20代の妊娠SOS新宿―キッズ&ファミリー」の佐藤初美理事長だ。

相談支援に取り組むNPO法人「10代・20代の妊娠SOS新宿―キッズ&ファミリー」の佐藤初美理事長=2020年11月、東京都内、提供写真

 2020年の緊急事態宣言期間中は家族内の性暴力相談が増えたと振り返る。「休校で家に居るときに義父や兄弟から性暴力を受けるケースが目立った。母親や警察に相談できず、どうしようもなくなって相談してくる子が多かった」

 宣言解除後の秋頃から件数は増加傾向に。SNS上で知り合った相手にレイプされるなど外出先で事件に巻き込まれた相談が目立ってきたと明かす。

 厚労省の集計調査によると、コロナで里帰り出産できないことや景気不安などが「産み控え」につながり、2020年、自治体に提出された「妊娠届」の数は激減した。2021年の出生数は大幅に減る懸念が強まる一方で、若者の予期せぬ妊娠の相談は増えていて、全国的な傾向と異なる現象が生じている。

 ▽中絶できず出産

 妊娠SOS新宿では、コロナ禍で貧困に陥り、助けを求めてくる20歳前後の女性の相談も増え続けている。カバーしているエリアには新宿・歌舞伎町など大きな繁華街があり、多くの飲食業や接客業が自粛要請を強いられた。勤務先が休業したことで収入や住む家を失い、見知らぬ男性の家を泊まり歩く中で妊娠してしまうケースも。「お金がなく受診もできず気付いたら中絶もできない状態になっていた。父親も誰か分からない」。佐藤理事長は厳しい表情を見せる。

東京・新宿の歌舞伎町を行き交う人たち=2020年6月

 事情があって生みの親が育てられない子どもを育て親に託す「特別養子縁組」を選択する若い母親は毎年1~2人だが、2020年は5人に。いずれも経済的理由だった。「育てるお金がなくて中絶する人もいれば、中絶や出産費用が工面できず相談しにくる人もいる。コロナが強く影響している」

 佐藤理事長はこうした現状は氷山の一角に過ぎないと訴える。コロナによる環境の変化や先が見えない不安感から「心が病んでしまって声を上げる力も残っていない人は多い」とみる。

 ☆ 妊娠SOS新宿のアドレス https://10dai20dai-ninshin.com/

 ▽虐待リスク

 2018年度の厚労省調査では54人のこどもが虐待で死亡(心中を除く)し、背景などを分析すると、「予期せぬ妊娠」が13人(約24%)を占めていた。その上で厚労省は、予期しない妊娠や養育能力が十分でない若年(10代)妊娠が虐待へのリスク要因の一つだと指摘する。

 厚労省の研究班は人工妊娠中絶手術を実施する全国の医療機関約190施設に協力を依頼。医師にアンケートで中絶に至った具体的な背景要因を尋ね、コロナ禍との関係を地域や年齢ごとに整理し分析する。2020年度内に結果をまとめる方針だ。

 厚労省によると2018年度の人工妊娠中絶は16万件を超えるが、母体保護法では、具体的な背景要因まで問うよう定めていないため、中絶に至る妊娠の経緯や背景などは分からない。アンケートではコロナ禍での減収や失業を理由にしたケースや自宅での自粛生活による影響についても尋ねる。

 研究班代表で医師の安達知子日本産婦人科医会常務理事は「背景を探り、予期せぬ妊娠、中絶を減らす取り組み、子どもや女性の健康を守る施策づくりに生かしたい」と話す。

 妊娠に関する悩みの相談先

 妊娠に関する悩みや相談は「全国妊娠SOSネットワーク」のホームページから全国の相談窓口にアクセスできる。https://zenninnet-sos.org/

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