ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2020 合評上映会開催

商業映画監督育成に取り組む「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2020」の製作実地研修で完成した短編映画3作品の合評上映会が、3日に都内で開催された。

今回上映されたのは、映画・ドラマ・ドキュメンタリー作品の助監督及び映像作家として活動中の植木咲楽監督作「毎日爆裂クッキング」、在学中からピンク映画や低予算の現場で働き、現在は助監督として活躍中の木村緩菜監督作「醒めてまぼろし」、映像ディレクター/エディターとしてMVやweb CMなどを手掛けている志萱大輔監督作「窓たち」の短編映画3作品。プロのスタッフとともに、35mmフィルムで撮影された。

「毎日爆裂クッキング」の植木咲楽監督は、重いテーマをコミカルな様子で描いた理由ついて聞かれ、「もともと食べ物をテーマにした映画を作りたいと思っていました。昨今の状況や自分の人生の中で、なにかしら罵倒されたり、不当な扱いを受けることは誰しもが経験のある事なのかなとおもい、それを作品にしたら面白いかなと思って撮りました。なるべく重い空気を笑い飛ばしてしまいたいなと、個人的には思っていたので、こういったテイストの作品になりました」と明かした。

今後はどんな作品を撮っていきたいかを問われるた植木監督は、「なるべく誠実な映画を作っていきたいです。できれば、見過ごされてしまったり、蔑ろにされてしまいそうなもの、歳を取ったらそういったことを忘れていってしまうのではないかという危機感があるんですが、そういう経験で感じた悔しい思いや、そこから助けてもらった時の嬉しさとかを忘れないで映画を撮っていきたいと思います」と語った。

「醒めてまぼろし」の木村緩菜監督は、「私自身、あまり友達や恋人的な存在もなく、拠り所というか帰るところが無いとき、自分が一人で生きていくためにはどうしたらいいだろうと思った時に書いた脚本です」と今回の作品テーマを選んだ理由を説明。演出については「主演の小野さんとはいろいろ話し合いました。どういう気持ちでいくかということを、限りなく言語化していく作業というか、その時どういう感情であるかということを中心に沢山話し合いました」と話した。

劇中であまりBGMを使用しなかったことの理由を聞かれた木村監督は、「なるべく生の音を録って使おうとあらかじめ決めて準備していました。この作品には音楽はいらないなと、音楽である一定の感情を塗りたくることをしたくない、音楽で挽回するということをしたくなかった」とその気持ちを明らかにした。今後撮りたい作品について聞かれると「言葉で説明できない感情をちゃんと映画にできたらいいなと思います」と次回作への意気込みを語った。

「窓たち」』の志萱大輔監督は、絶妙な男女のすれ違いを切り取ったストーリーを「ndjcに応募した脚本をいろんな人に読んでもらって意見をもらい、直して直してこの脚本になった」と話した。印象的なラストシーンについては脚本を書き換えていくうちに少し違ったものになったらしく「一番最初の脚本では“信号が青に変わっても進めない”としか書いてなかったけれど、その後、脚本を直して別のラストシーンにしたけれど、また元のラストシーンに戻し、“点滅している”という部分を足して書き直しました。引きの映像も撮っていたけれど、場所の説明になってしまう気がして、ただ、赤と青、そして点滅だけで表現できないかなと思って最終的にこのシーンになりました」と説明した。

今後はどんなテーマに興味があるか聞かれると「映画を作ることが好きなので、それを長く続けていくというのはどういう事だろうと考えた時に、長く撮り続けていった時に、自分はどういった作品を撮っているんだろうということに興味があります」と考えを語った。

会場からは監督たちへの期待を込めた温かい拍手が広がり、合評上映会は幕を閉じた。

3作品は、2月26日より角川シネマ有楽町で上映されるのを皮切りに、名古屋(3月12日から)、大阪(3月19日から)でも一般公開される。

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