かみ合わない人

©株式会社長崎新聞社

 いい趣味とはいえないが、政治家の失言集を読み出すと止まらなくなる。ジャーナリストの木下厚さんが問題発言を集めた「政治家失言放言大全」(勉誠出版)には、森喜朗氏の失言が実に26もある▲首相時代、総選挙の折に「投票に行かないで寝ててくれればいい」と発言した。無党派層に棄権を呼び掛けるような不用意な物言いだったが、ご当人が意に介した節はない▲その人はいま、東京五輪・パラリンピック組織委員会のトップとして世界の不評を買っている。女性理事を増やすという日本オリンピック委員会の方針に「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言し、女性蔑視という非難がやまない▲話の長短に男女の別はなく、性差を持ち出す意味はない。きのう発言を撤回したが、何がどう不適切か、ご当人は説明できるか▲国民は慎重派が大多数なのに、五輪を「どういう形であろうと必ずやる」とも発言した。こう言えば皆はどう受け取るだろう。そんな心の綾(あや)に無頓着では、国民とも世界とも話はずっとかみ合わない▲失言ではないが、森氏は首相の頃にこう語った。「予算成立に全知全能を傾ける」。本当は「全身全霊」だろう。全知全能とは「何でも知っていて何でもできること」。本人はその気でも、国民は全知も全能も期待しようがない。(徹)