2年目ドラ1石川昂は「外野も」 中日・与田監督が描く青写真「トライしてほしい」

中日・石川昂弥【写真:荒川祐史】

R・マルティネスは五輪予選で離脱の可能性、代役候補に藤嶋の名前も

1月末、中日・与田剛監督が春季キャンプへの意気込みをCBCテレビ「サンデードラゴンズ」の取材カメラの前で語った。指揮を執って3年目。勝負をかけるシーズンを左右する重要な準備期間への思いを、放送されなかった部分も含めて紹介しよう。【CBCアナウンサー/若狭敬一】

「テーマはスピードアップです。まずは自分自身の色々な判断。それに対してスタッフも選手もいち早く反応してもらいたい。逆もそう。選手の反応から我々が答えを出さないといけない時もある。もちろん、動きのスピードアップも求めます。とにかく心身ともにスピードアップです」

それに至った経緯とは。

「2年間の反省からです。監督としてもっと勝てる采配、準備をしなければいけなかった。それが一番の反省です。全ていい結果にはならないと承知していますが、自分としては万全ではなかった。今年はそれを1つでも減らして、1つでも勝ちに繋げていけるようにしないといけません」

番組では解説者からの質問を紹介した。岩瀬仁紀氏はオリンピック予選で離脱する可能性があるライデル・マルティネス投手に代わる守護神候補を尋ねた。

「福(敬登)、祖父江(大輔)は去年の実績もあるので、クローザーに近い存在です。ただ、そうはさせないと、去年フォームを変えた鈴木博志がもう1回返り咲きたいと取り組んでいますし、新外国人の(ランディ・)ロサリオもランナーを背負ってからの間の取り方がうまいし、150キロ以上のストレートも投げます。スライダーやチェンジアップと変化球も多彩。リリースポイントが安定しているので、コントロールは大きく乱れないでしょう」

藤嶋健人投手の名前も挙がった。

「彼のテンポの良さはすごく流れを引き寄せますし、打たれても平気な顔をしています。あれはね、僕、好きなんですよ。打たれても間がダラダラと悪くならず、ポンポンといいリズムで投げられる。性格的にもうまく切り替えられるのは大事だと思います。抑えは固定したいですね」

中日・根尾昂【写真:荒川祐史】

根尾の外野起用は「ショートの守備のレベルを上げるため」

川上憲伸氏は根尾昂内野手の起用法を問うた。

「根尾はショートで勝負させます。去年、外野手で使いましたが、これはショートが駄目で外野に回したわけではなく、あくまでショートの守備のレベルを上げるためでした。スローイングや足の運びなど外野の経験は必ず役に立つ。去年までの根尾は京田(陽太)に守備で勝つのは厳しいという判断をしていました。バッティングも思い通りにならない。でも、経験しないと上手くならない。そこで2年間、準備させたんです」

放送ではカットしたが、「若手を使え」の大合唱にはキッパリと異を唱えた。

「ただ単に使うのは無謀です。京田が『これはやばい』と思う力をつけた選手が来ないと駄目なんです。プロの世界のライバル争いとはそういうものです」

根尾は開幕前までが勝負。意外に時間はない。

「キャンプの練習試合で勝負をさせて、もし、そこで力が及ばなければ、本人がしっかりプロとしての判断をしないといけない。じゃあ、どうするか。今度は本人が腹から外野で1軍の試合に出るための準備をしようと思えば、また違う戦いになるでしょう。外野の適正も素晴らしいものがあります。今年は根尾と京田のショート争いがキャンプのポイントの1つです」

中日・高橋周平【写真:荒川祐史】

高橋周平を2番で起用するプランも披露

吉見一起氏は石川昂弥内野手が二遊間を守る可能性を聞いた。吉見氏は「仕草、発言、行動。どれをとってもプロで活躍する雰囲気がある。僕はセカンドで使ってほしいです」と力説した。

「まず、サードとショート、セカンドとファーストでは守る位置が違いますよね。去年、内野のコーチとは『セカンドも行けるんじゃないか。でも、動きはショートの方が向いているんじゃないか』という話になりました。去年はずっとサードで使いましたが、結論から言えば、今年はサード以外も守らせます。キャンプでもう1度動きを確認して、セカンドでも行けるとなれば、阿部(寿樹)を脅かしてほしい」

さらに外野の可能性もあると明言した。

「外野をしてみて、思ったより守れるとなれば本人も意欲が出るはずです。私はやらず嫌いというか、『やりもしないで、できません』というのが嫌いなんです。トライしてほしい。実は去年、仁村(徹)2軍監督とレフト起用の相談はしていたんです。でも、高校時代に右肘を痛めたことがあるということで控えていました」

根尾と石川昂について指揮官の期待はファンのそれと同じだった。「彼らが打席に入った時、ワクワクしません? 私もするんですよ。同じユニホームを着ている我々年上のプロの人間がワクワクするんですから。そりゃ、見たいですよ」と本音を吐露した。ただ、決してやすやすとレギュラーの座は与えない。まずは準備。準備完了と見た根尾は京田と一騎打ち。一方、石川昂は高橋周平とのサード勝負を避け、複数ポジションを守らせる。それがこのキャンプの明確な方針だ。

現在、臨時コーチを務めている立浪和義氏の質問は2番打者についてだった。与田監督は「相談しましょう」と即答した後、現状のプランを披露した。

「高橋周平の2番です。大島(洋平)が出塁する。でも、その後に一、二塁間へ打たないといけないとか、ああしなきゃ、こうしなきゃと考えると、周平の良さが消えてしまう。できれば、自由に打たせたいバッターです。だから、2番を打たせた時の周平のメンタルがどうなるかは懸念しています。そこは本人やバッティングコーチと相談します。2番は年間の打席数も増えますし、周平のバッティングは相手チームの脅威です。大島が出て、周平がホームラン。もう一気に2点。ランナーがいなくなって、また3番から始まる。これは脅威ですよ」

指揮官の言葉は終始、熱を帯びていた。今回、書き切れなかった部分はまたすぐに紹介しよう。キャンプは第1クールが終了。第2クールには1軍対2軍の紅白戦が組まれている。10年ぶりのリーグ制覇へ。戦いは始まっている。(CBCアナウンサー 若狭敬一/ Keiichi Wakasa)
<プロフィール>
1975年9月1日岡山県倉敷市生まれ。1998年3月、名古屋
大学経済学部卒業。同年4月、中部日本放送株式会社(現・株式会
社CBCテレビ)にアナウンサーとして入社。
<現在の担当番組>
テレビ「サンデードラゴンズ」毎週日曜12時54分~
ラジオ「若狭敬一のスポ音」毎週土曜12時20分~
「ドラ魂キング」毎週金曜16時~

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