【競泳】池江璃花子が復帰後初の表彰台 蘇った水の上を滑る泳ぎ

【写真左】池江は惜しくも2位に終わった【写真右】水の上を滑るかのように泳ぐ池江

水の上を滑った! 競泳のジャパン・オープン最終日(7日、東京アクアティクスセンター)の女子50メートル自由形決勝は、白血病からの完全復活を目指す池江璃花子(20=ルネサンス)が24秒91で2位に入り、復帰後初の表彰台へ上がった。周囲の想像をはるかに超える回復ぶりには、東海大学水泳部監督で2016年リオデジャネイロ五輪競泳日本代表のコーチを務めた加藤健志氏(55)も太鼓判。何かと騒がしい東京五輪のイメージを回復させた上で、次のパリ五輪での“ミラクル金メダル”に大きな期待を寄せた。

池江は午前中の予選を1位(25秒06)で通過し、午後の決勝は慣れ親しんだ4レーンのスタート台に立った。序盤は他選手に後れを取りながらも、後半に猛追して2位でフィニッシュ。昨年8月に復帰して以来、初となる24秒台を叩き出した。

レース後には「ハイレベルな試合で表彰台に上がる3人が24秒台というのは、今までなかなかないことだったので、この戦いの中で2位に食い込めたってことは自分の成長をすごく感じられたレースかなって思う」と手応えを口にする一方で「いい結果ではあったが、結局は2番には変わりないので、次は1番を狙っていきたいなっていう気持ちで取り組んでいきたい」と持ち前の負けん気をのぞかせた。

優勝こそ逃したものの、全盛期を思わせる泳ぎ。これにはかねて池江を見てきた加藤氏も太鼓判を押す。体つきは「白血病の影響が大きくて(復帰から)これだけたっても体が“ガリガリ”じゃないですか。だから筋肉の成長とかは、まだまだ本当に一番強かったときの半分以下みたいなイメージがある」としながらも「日本人だと唯一、璃花子しか泳げないっていうか、水の上を滑っていくような、軽く高速なそういう泳ぎがこの時点でよみがえってきていますね」と評価した。

とはいえ、他の選手に比べて、体調面で不安を残していることに変わりはない。加藤氏は「体ができていないままやる気や結果が先に出てしまうと、たぶんどこかでキツくなってくると思うんですよね。だから次はフィジカルの部分をね。筋肉量を増やして、次のステージへ順調にいってほしいですね」と指摘する。もちろん池江自身も課題は理解済みで「(食事を)なるべく全部食べる。おかわりをして体重を増やしている」とさらなるレベルアップを目指している。

東京五輪の代表選考会となる日本選手権(4月、東京アクアティクスセンター)について、池江は「まだ何も決まっていない状態」と明言を避けたが、加藤氏は「体調が第一優先」とした上で「もし璃花子が東京五輪に出ている姿が見れたら、国民の皆さんに与える水泳のイメージはすごく大きいと思う。メダル取ってとかは全くなくて、出て泳いでいる姿が伝えられたらいいなと思う。パリ五輪ぐらいからは自由形とバタフライで金メダルを取ってくれると、腰を抜かすくらいうれしいですね」とエールを送った。

新型コロナウイルス禍に加えて大会組織委員会の森喜朗会長(83)の“女性蔑視発言”など度重なる舌禍で、東京五輪のイメージダウンは甚だしい。そうした状況にも病を克服しようと懸命に泳ぐ池江の姿があれば、水泳だけではなく五輪そのものへの国民の意識も変わるだろう。

数々の予想をいい意味で裏切ってきた池江だけに、東京、さらにはパリでもミラクルを起こすのか。再び頂点へ立つために、焦らず一歩ずつ道を切り開いていく。

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