2020年度 「居酒屋の倒産動向」調査

 2020年度(20年4月‐21年3月)の居酒屋の倒産(負債1,000万円以上)が、1月までの10カ月間で145件(前年同期比16.9%増)に達し、2001年度以降の20年間で2番目となった。このままのペースで推移すると、年度最多の2019年度(149件)を2月にも上回り、過去最多の更新が確実になった。
 居酒屋は、2019年度は人手不足に伴う人件費高騰と消費増税で業績が悪化し、過去最多の倒産を記録した。2020年度は新型コロナ感染拡大が深刻さを増し、政府は感染拡大を抑えるため緊急事態宣言を発令し、飲食業界に休業や時短営業を要請した。企業も在宅勤務を実施し、来店客の大幅減少を招いており、人手不足は解消したが、それを上回る事業環境の悪化が続いている。
 倒産の原因別では、販売不振が127件(前年同期比17.5%増)と全体の9割弱(構成比87.5%)を占め、休業や時短営業の直撃を示している。資本金別では1,000万円未満が136件(同93.7%)、負債額別では1億円未満が131件(同90.3%)、従業員10人未満が136件(同93.7%)など、小・零細規模の倒産が9割以上を占めている。
 コロナ禍の収束が不透明ななか、倒産企業のほとんどが過小資本の小・零細規模で、再建を諦めた消滅型の破産が136件(構成比93.7%)と9割以上に達する。
 企業、仲間内の忘年会、新年会の自粛で、居酒屋は年末年始のかき入れ時の売上が消失した。“三密回避”のため飲食店は滞在時間や来店客数を制限しているが、1月に11都府県に緊急事態宣言が再発令され、2月には10都府県で延長された。これ以外にも時短営業を要請する自治体もあり、居酒屋を含む飲食業界を取り巻く経営環境は厳しさを増している。新型コロナの国内感染確認から1年を経過し、新たな支援策が求められている。

  • ※本調査は、日本産業分類の「飲食業」のなかの、「酒場,ビヤホール」の2020年度(4-1月)の倒産を集計、分析した。
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2019年度10-12月期以降、5四半期連続で増加が続く

 2020年度の「居酒屋」倒産は、21年1月までの10カ月で145件(前年同期124件、前年同期比16.9%増)に達した。2019年度は深刻な人手不足で人件費が高騰し、倒産は2019年度10-12月期39件(前年同期比2.6%増)、1-3月期39件(同44.4%増)と増勢をたどっていた。そこに2020年に新型コロナが襲来し、休業や時短営業などの要請で2020年度4-6月期46件(同35.2%増)、7-9月期46件(同24.3%増)、10-12月期43件(同10.2%増)と、増勢を強めている。
 コロナ禍で、国や自治体は貸付や給付金、助成金、協力金などの支援策を相次いで実施した。だが、居酒屋は小・零細規模が多く、自己資金もぜい弱で休業や時短営業による売上消失は資金繰り悪化に直結している。今後、縮小均衡を支える次の一手の支援も必要になっている。

原因別 「販売不振」が9割弱を占める

 原因別の最多は、「販売不振」の127件(前年同期比17.5%増)だった。居酒屋倒産に占める割合は87.5%(前年87.0%)で、前年同期より0.5ポイント上昇した。同業者との競合に加え、新型コロナ感染拡大による外出自粛、休業や時短営業なども大きく影響したようだ。
 そのほか、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」と代表者の病気や死亡による「その他」が各5件。資産背景が脆弱で、甘い事業計画で創業し、事業基盤を確立しないまま事業継続を断念した「事業上の失敗」も4件(前年同期5件)発生した。

負形態別 消滅型の「破産」が136件で9割以上

 形態別では、最多が「破産」の136件(前年同期比16.2%増)。倒産に占める構成比は9割(93.7%)を超えた。
 一方、再建型の「民事再生法」は6件(前年同期7件)で、構成比は4.1%にとどまった。
 倒産した企業は、資本金別では1,000万円未満が136件(構成比93.7%)、負債額別では1億円未満が131件(同90.3%)と、小零細企業が9割以上を占めた。コロナ禍での先行き見通しが立たないなかで、「破産」を選択するケースがほとんどで、事業再生の難しさがうかがえる。

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