確定拠出年金、効率よく運用するためにはメンテナンスが重要

確定拠出年金の加入者数が右肩上がりで増えています。節税メリットが大きいことは言うまでもありませんが、効率よく運用するために注意しておくべきポイントがあることをご存じでしょうか?


企業型は年間報告書と想定利回りをチェックしておこう

確定拠出年金には個人型のiDeCoと企業型DCと言われる2種類があります。令和2年の1月から9月までの新たな加入者は、企業型で約25.7万人、個人型で約25.8万人と同様のペースで増え続けています。企業型の特徴は、自分で加入手続きを行う個人型と違って勤務先の退職金制度として加入することになります。そのため、時間が経つと、制度の中身への理解があやふやになっている方も少なからず見受けられます。企業型は勤務先が掛け金の拠出をしてくれてはいますが、運用や受け取る時期、受け取り方法などはすべて自分の責任において行う必要があります。ですから放置しておくことはお勧めできません。

では、どうすればいいのかと言うと、勤務先から制度を委託されている運営管理機関からのレポートをチェックすることが重要になります。具体的には年に1回以上「確定拠出年金・残高のお知らせ」などが記載された書類が郵送されてきます。なんとなく眺めて捨ててしまっているとしたら要注意です。原則として再発行はしてもらえませんから捨てずに保管しておかれた方がよいですし、以下3点については最低限確認をしておきたいところです。

1.資産評価額と評価損益
2.運用商品と比率
3.毎月の掛金額

例えば、評価損益の増減がない場合は要注意です。おそらく定期預金などの元本確保型の商品で運用をされているでしょうが、「想定利回り」と言う用語を聞いたことはないでしょうか。特に、退職金制度が途中から企業型確定拠出年金へ変更になった場合には説明が行われているはずです。というのも、会社が負担する掛金は、想定利回りを元に決められているため、想定利回り以上で運用できていないと本来の退職金が目減りしていることになるのです。想定利回りについては0%-2%台とする会社が多く、2%を上回る運用をするには、投資信託など元本変動型の商品を組み入れないと厳しいのが実情です。ただし、50代半ばで残りの運用期間が10年を切る場合には、運用商品の選択や比率変更を慎重に行う必要があります。最優先することは、運用をマイナスにしないことですから、確定拠出年金以外の資産で長期の運用を行うことも一考です。

他には、毎月の掛金額を確認しておくことです。会社が拠出する掛金(事業主掛金)は決められていますが、自分が拠出する掛金(加入者掛金)を増やすことができるかもしれません。税制メリットを受けながら退職金を効率的に増やせるので一考する価値はあります。将来後悔することがないように、会社の研修を利用したり、聞ける部署があれば質問したり、自ら積極的にできることを行いましょう。

個人型はなるべく拠出を続けることを考える

個人型の場合、掛け金を100%自分で負担するため、教育費がかかる時期などは一時的に掛金の拠出を中断したくなるかもしれません。その場合に注意しておくべきポイントをお伝えしたいと思います。まず、掛金の拠出を中断することは可能ですが、そうなると運用指図者として運用のみを継続することになります。

その時に注意することが2つあります。1つ目は運用指図者になったとしても手数料はかかり続けることです。加入先の機関によりますが、毎月最低でも171円かかるため定期預金など元本確保型の商品で運用していると元本割れすることになります。特に所得控除の税制メリットがない国民年金第3号被保険者の主婦などには手痛いコストです。2つ目は、運用指図者でいる期間は退職所得控除期間の勤続年数に含まれないことです。わかりやすくいうと、受け取る時の税制優遇が小さくなってしまいます。確定拠出年金は受け取る時にも税制優遇があるのですが、拠出年数が長くなるほど大きな控除を受けることができるのです。

これら2つの注意点には、拠出を年払いに変更することで対策が可能です。例えば、毎月の掛金を最低額5,000円に下げて、拠出を年払い(60,000円)に変更すると、毎月かかっていた手数料を年1回で済ますことができます。また、拠出を継続するので受け取る時の税制優遇が小さくなることもありません。ただし、ここでも注意することがあります。運用商品を投資信託にしている場合、拠出するタイミングが月1回から年1回に減ることで一時的な相場の動向に左右される可能性が出てきてしまいます。つまり、高値で買い付けてしまうといったリスクを抱えることにもなるのです。

これらをすべて考慮した上で自分にとってベターな運用を検討する必要があります。例えば、年払いにするのは、一時的に拠出を抑えたい時に限定し運用商品は元本確保型にしておくなど状況に応じて対策を行いたいところです。

2021年1月現在、確定拠出年金は原則60歳まで資金を引き出すことはできません。一度加入したら最後まで続けるのがベストですから、上手に続けて運用できることを考えておきましょう。

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