テレワークで生活費増「今の生活を続けるなら60歳以降も働くべき?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、45歳、会社員の女性。共働きで中学生のお子さんがいる相談者。テレワークが中心になり、子どもの進学費用も必要になってくる時期。光熱費と食費が膨らんでいて、将来も働き続ける必要があるのか気がかりだといいます。FPの鈴木さや子氏がお答えします。

老後も今の生活を維持するためにはどうすればいいですか?

主人、正社員。私、派遣社員。フルタイム共働きです。子どもは中学から大学までの私立一貫校に通っています。テレワーク中心になり光熱費が膨らんでいます。コロナ禍で旅行にも容易に行けず、おいしいものを食べることと音楽・動画配信サイトを視聴するのが唯一の楽しみとなっています。それにより食費が3人なのにかなり多いです。

夫婦共、幼少期からお金に苦労してきた為、老後、子どもに迷惑をかけたくないと思い、出産前からこつこつ貯蓄をし、3,000万円台の新築マンションを購入しましたが、すでに子どもが小学生の間にローンは完済しました。15年前から投資信託から少しずつ投資も始め、今は国内株、米国ETF中心に運用しています。

私の夢は60歳で引退し、今、毎年寄付している慈善団体のボランティアスタッフとして従事したいと思っています。主人は65歳まで今の職場で働き、その後は週2〜3日くらいパートをしたいと言っています。

今、気がかりなのは、子どもが大学で私立の理系(医療系ではない)を希望していること。

親戚の付き合いで13年に1回新車を買わなければならないこと(250万ほど)。親が高齢なので、今後、主人の方と私の方と合わせて、200〜400万くらい拠出する可能性があるということ。今の生活を60歳以上も続けるとなるとやはり私もパートで働き続けた方がいいでしょうか?

退職金は、私は無しで、主人は概ね500万円と予想されます。学資保険の返戻金は、高校入学時45万。大学入学時150万。私の積み立てている個人年金が、60歳から10年間3~4万円戻ってきます。入院保険は入っていますが、生命保険には加入していません。主人だけでも加入するべきですか? もう少し投資にお金を回しても良いかという所も気になります。よろしくお願いいたします。

【相談者プロフィール】

・女性、45歳、会社員、既婚

・同居家族について:夫50歳、子ども14歳

・住居の形態:持ち家(マンション・集合住宅)

・毎月の世帯の手取り金額:52万円(主人34万円、私18万円。妻財形貯5万含まず)

・年間の世帯の手取りボーナス額:150万円

・毎月の世帯の支出の目安:45万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:3万6,000(管理費のみ)

・食費:12万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:13万円

・保険料:2万5,000円(学資保険1万1,000円、個人年金8,000円含む)

・通信費:2万8,000円(固定電話、携帯電話、音楽動画配信サイト)

・車両費:5万6,000円(車両保険年額)

・お小遣い:主人・私4万ずつ(昼食費込み)子ども2,000円

・その他:慈善団体に寄付年間30万

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:12万円(財形貯蓄5万含む)

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

・現在の貯蓄総額:2,500万円(財形貯蓄分570万含む)

・現在の投資総額:930万円

・現在の負債総額:0円


鈴木:コロナウイルスの影響で旅行もなかなかできない今、テレワークやリモート授業など環境の変化を余儀なくされ、ストレスもたまる一方ですね。ですから、おいしいものを食べることなど、楽しめてストレス発散できることに、お金をかけて大丈夫。テレワークで光熱費が膨らむのも仕方ありません。心の健康なければ、元気に働いて収入を得ることもできません。あまり食費が高いといったことは気にせず、トータルの支出額をコントロールしていきましょう。

さて、お悩みは「60歳以降働く必要があるか」「生命保険に加入すべきか」「投資にもっとまわすべきか」の3つのようです。順に見ていきましょう。

今の生活費が変わらなければ60歳以降は働かなくても大丈夫

貯蓄力の高いご相談者、私立の学校にかかる費用も大きい今も、しっかりと貯蓄を続けています。今後50年間の資産総額の推移をみてみましょう。※介護や自動車購入、リフォームの時期は、筆者が独断で設定しています。

青い棒グラフが収入、オレンジの棒グラフが支出、黄色の折れ線グラフが資産総額の推移です。現在、財形貯蓄や投資を合わせて3,430万円あり、これから私立理系大学および大学院に行ったとしても、年間の収支金額が赤字になる年はほとんどないため、順調に資産を増やしていけそうです。

ご相談者60歳、ご主人65歳以降は、収入は個人年金や公的年金のみとなるため、年間収支は赤字ですが、95歳まで貯蓄を使いながら生活しても、35年後に2,500万円以上残る計算となりました。よって、今の収入や生活レベルが変わらなければ、ご相談者は60歳以降パートなどで働かなくても大丈夫。ボランティアスタッフの夢も叶えられます。しかも実際には、お子様独立後の生活費はもっと少なくなると思われますので、かなり安心と言えるでしょう。

もし減収したら? 老後破綻を避けるために

しかし注意したいのは、今より収入が減るリスクです。コロナの影響で減収にならざるを得ない家庭も多くあるため、もし減収した場合の結果もお伝えします。もし家計年収が5年後から3割減、ご主人60歳以降の5年間が今の半分になったら、ご相談者様が87歳の時に資産が底をつく結果になりました。

破たんを避けるための対策は2つ。1つは、60歳以降の生活費を年間30万円減らすことで、もう1つは、ご相談者が60歳から5年間年200万円の収入を得ることで、破たんを免れます。前者であれば、夢も叶えられますので、もし今後収入が減ることがあったら、生活費の見直しに早めに着手してください。

これから先のことは誰にもわかりません。60歳まで(ご主人は65歳まで)健康で働けるように気を付けながら、今の生活費を超えないようコントロールしていきましょう。

お子様が独立するまで収入保障保険に入るのも手

生命保険に未加入ですが医療保険には入っているようです。貯蓄がしっかりあるため、医療保険の必要性はさほど高くありません。

治療にかかるお金より心配なのは、お子様の教育費がかかる間のご主人の死亡です。貯蓄や遺族年金はあるとはいえ、ご主人の収入がゼロになり、私立理系大学に行かせることになる場合を想像してみてください。もしご不安に感じたら、お子様が独立するまでの10年間だけでも生命保険に入ると安心です。

入るのならば、亡くなった以降満期まで、一定額を年金形式で受け取れる「収入保障保険」がおすすめです。50歳男性が被保険者の場合、死亡以降保険満期まで、月10万円を受け取り続ける内容で、保険料は月約2,000円~4,500円くらいです。ご主人の今の健康状態や喫煙の有無によって保険料は大きく変わりますので、一度シミュレーションしてみてくださいね。

さらに投資するなら、iDeCoとつみたてNISAを活用

今は国内株と米国株ETFを中心に投資信託を保有されていらっしゃいます。コストの低いETFを選ぶなど、かしこく投資をされていますね。さらに投資をするのであれば、非課税で運用できるiDeCoやつみたてNISAを活用すると良いですね。特にiDeCoは、大きな節税効果もあるため、もし加入できるのであれば早めに始めましょう。

ご夫婦ともiDeCoに加入した場合、年間で最大55万2,000円掛けることができます(お勤め先で確定拠出年金や企業年金に加入している場合は上限掛金が下がります)。所得税率をご主人20%ご相談者10%、住民税を一律10%とした場合の節税効果はなんと2人合わせて138,000円!この節税効果は60歳まで掛けている間ずっと続くため、ご主人は10年間、ご相談者は15年間、増えた手取り分を貯金にまわせます。

つみたてNISAには節税効果はありませんが、最大20年間の運用益が非課税となります。60歳にならないと受け取れないiDeCoと異なり、いつでも売却し現金化できるので、たとえば大学資金の一部に使うことも可能です。また、学資保険の受取時期を工夫することで少しだけ増やせる可能性があります。高校入学時期の学資金は受け取らずに、大学入学時に合わせて受け取ることも検討してみてください。

60歳以降の夢プランをぜひ叶えるためにも、これからもご家族で楽しく健康に過ごしていってくださいね。

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