2021年度入試、私立大の志願者数は2年連続の減少、倍率低下が予想される

初めての大学入学共通テストの第2日程も終了し、私立大学の一般選抜も始まりました。大学入学共通テストの平均点が予想外に高くなったこともあり、私立大の共通テスト利用方式の志願者数は当初予想よりも減少幅が小さくなりそうです。ただし、一般方式は難関大学から中堅大学まで幅広く減少していますので、最終的には私立大の志願者数は昨年に続いて2年連続の減少となりそうです。一般選抜の今後の注目点ですが、1つは個々の大学の志願状況と合格者数の増減による倍率の変化です。そして、もう1つは2月後半から3月に行われる後期(二期)入試の志願動向です。

大学志願者数の実人数が減少している影響で私立大志願者数も減少

国公立大学2次試験の出願は受付最終日の15時現在で前年の同時期と比べて4%減少しています。大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の出願者数も前年比96%ですので、最終的な2次試験出願者数は前年より4~5%の減少となりそうです。国公立大学全体で見ると学校推薦型選抜の募集人員が23人減少していますが、総合型選抜の募集人員は1643人も増加しています。その分、一般選抜の合格者数は減少するため、志願者数が減少しても倍率はそれほど変わらないものと思われます。

一方で私立大学の一般選抜もすでに始まっていますが、志願者数は全体で減少となる見込みです。河合塾の大学入試情報サイトKei-Netで2月4日現在の集計データが公開されていますが、全体では前年比89%(一般方式87%、共通テスト利用方式93%)と大きく減少しています。志願者数減少の最大の要因は受験人口の減少です。そもそも18歳人口が2万6000人減少している上に、高大接続改革元年入試(2021年度入試)を避けたい受験生の現役合格志向が高まったことで高卒生の受験生が減少しています。そのため、今年の大学志願者数の実人数は、昨年の66万5000人から2~3万人減少していると考えられます。前年比にすると95%程度となりますので、各大学は志願者数が5%減少していて普通の状態だと言えます。最終的には私立大志願者数(延べ志願者数)は全体で10%程度の減少となるでしょう。

また、文部科学省が2017年7月に通知した「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」によって、大学入学者選抜に係る新たなルールとして教科・科目に係るテスト(学力試験=一般選抜)の実施時期は、「2月1日~3月25日まで」とされていますので、多くの私立大がこれまで1月末に実施してきた試験日を2月1日以降に変更しています。いわゆる「2月1日問題」です。試験日の多くは2月初旬に移動していますので、自ずと多くの大学で入試日程が重なってしまい、受験生の併願がし難くなっています。こうしたことも一般方式から共通テスト利用方式に志願者が移ったことに影響していると見られます。

参考サイト:

河合塾の大学入試情報サイトKei-Net 主要私立大 集計データ

https://www.keinet.ne.jp/exam/future/index.html

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上智大や学習院大は志願者数増加、千葉工業大は共通テスト利用方式が大幅増

個別の私立大の志願状況について、大学通信ONLINEの2021年入学志願者速報を見ると全ての私立大で一律に志願者数が減少している訳ではありません。2021年度入試では入試制度を大きく変えた私立大がいくつかあります。その代表格は早稲田大、上智大、青山学院大、立教大、学習院大などです。中でも上智大と学習院大は、新規に共通テスト利用方式を導入することで注目されていましたが、結果として上智大、学習院大ともに志願者数が微増となりました。立教大も主に共通テスト利用方式で志願者数が増加しています。

これに対して、早稲田大、青山学院大は予想されていた通り志願者数が減少しています。入試改革の理念と受験生の志向の間でどう折り合いをつけるか、あるいは折り合いは勘案しないで理念を貫くのか、非常に難しい問題がそこにはあります。ただ、入試改革の成否は志願者数だけで測れるものではありません。どのような受験者層に支持されているのか、それが目指す改革理念の方向性と整合しているのか、など時間をかけて検証することになるでしょう。

こうした中で目を引くのが、千葉工業大です。共通テスト利用方式が全学部で増加しており、前年の志願者数の1.3倍以上にのぼる学部もあります。千葉工業大は新型コロナウイルス禍による経済情勢の悪化を受けて、受験生の進学支援のために共通テスト利用方式(前期・中期・後期)の受験料を免除しています。つまり、無料受験です。かなり思い切った施策ですが受験生の志向に合っていたようです。この共通テスト利用方式の無料化ですが、多少入試に詳しい方であれば、自大学で試験を実施しない分、実施の経費が低廉なのではないかと考えるかも知れません。

ただ、実際は出願データの処理、合否判定作業、合格発表・通知など一連のフローは他の入試方式と全く変わりはありません。試験実施と採点処理はありませんが、試験運営のコストは必要なのです。加えて、大学入試センターに対して、成績提供手数料を志願者1人の成績を1回請求するごとに支払っています。こうしたことから、共通テスト利用方式の受験料無料化は、どの大学でもできそうではあるものの意外に実現が難しいのです。大学内の実務を知る方であれば、受験料無料化の学内調整を考えただけでも気が遠くなることでしょう。

参考サイト:

大学通信ONLINE 2021年入学志願者速報

https://univ-online.com/exam/

合格者数は私立大全体では昨年並みの見込み、年内入試の合格者数増加も影響する

昨年に続き、私立大志願者数が減少となりそうですが、合格者数は昨年並みになるか、あるいはやや増加すると思われます。個々の大学が置かれた状況によって異なりますが、一般的に志願者数が増えれば合格者数も増加します。逆に、志願者数が減少した場合は合格者数も減少します。ただ、昨年は全体の志願者数が減少しましたが合格者数は増えていました。大規模な私立大で入学定員超過率の調整が一段落したことと、新増設された学部・学科(新設大学も含む)などの影響もあったと考えられます。

そのため、今年も合格者数は私立大全体では昨年並みかやや増加するものと見られています。このことから入試の難易度を示す指標の1つである倍率は低下すると予想されます。この傾向は今後も続いていきますので受験生から見れば、大学進学を目指す上での競争環境が年々緩和されることになります。

また、これから出願できる後期(二期)入試、3月入試ですが、昨年から志願者数が減少に転じています。入学定員超過率の調整が一段落したことで、合格者数の調整弁としての役割が失われていることと、学校推薦型選抜、総合型選抜などによってすでに年内に入試を終えている受験生が年々増加していたためと考えられます。年内入試での合格者ですが今年は昨年以上の人数になっているものと予想されます。前述のように国公立大でも1600人以上の募集人員増加とそれによる合格者数の増加があると考えられます。その分、一般選抜を受験する大学志願者の実人数が減少することになります。私立大の年内入試の合格者数を加えてればさらにその数は増えるでしょう。

つまり、これから行われる後期入試・3月入試は志願者数が昨年よりも減少すると見られますし、場合によっては受験生がほとんど残っていないこともあり得ます。特に定員規模の大きな大学・学部の場合、今年は志願者数の減少による大幅な倍率低下も考えられます。最後まで一般選抜に取り組む受験生にとっては、追い風となるかも知れません。

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