「まだ作戦以前の段階」 白星発進の楽天・石井監督が今後目指す野球は?

試合前にナインに声をかける楽天・石井一久GM兼監督(右から2番目)【写真:荒川祐史】

「アピールしてくれてよかった」と若手の奮闘に満足げ

今季から現場の指揮を執る石井一久GM兼監督が13日、キャンプ地の沖縄・金武町で行われたロッテとの練習試合に8-3で快勝。対外試合初采配の試合を白星で飾った。監督デビュー戦に“石井イズム”は見えただろうか……。

真夏のような強い日差しが照りつけたかと思えば、にわか雨……。交互に何度も繰り返される天候の下で9イニングを戦い終えた石井監督は「ベンチが西日でなくてよかった。それとベンチがちょっと狭い。本球場(本拠地・楽天生命パーク宮城)はもう少しゆったり座れると思います」とユーモアたっぷりに初采配を振り返った。

実際、ベンチの後列左端(本塁寄り)の一角に身長185センチ、体重100キロ、ユニホームのサイズ5XLの巨体を収める姿は窮屈に見えた。

「選手たちは今、チームの作戦に沿ったことができるかどうか以前に、1軍のふるいにかけられている状態。そういう中で、しっかりやってくれていると思う。これから実戦を重ねていけば作戦も入ってくる。まずは自分をアピールしてくれたので良かった」

現在1軍キャンプに参加している4人の捕手のうち、最も若い21歳の石原彪捕手がこの日「6番・DH」で出場。4回2死二塁では左中間を深々と破り、172センチ、96キロの巨体を飛ばして三塁を陥れた。さらに7回にも左越え適時二塁打。1・2軍のボーダーライン上にいる選手の奮闘に、指揮官は相好を崩した。

投手陣でも、石井監督が「先発の5、6番手を争う存在」と見ている瀧中瞭太投手が先発して2回を1安打無失点。上々のスタートを切った。救援陣も、5回から3番手で登板した菅原秀投手が安田の強烈なライナーを右太ももに受け、降板を余儀なくされたのは不運だったが、2番手の池田隆英投手、4番手の津留崎大成投手が2イニングずつ無失点に抑えた。「投手陣の(1軍ボーダーラインの)8、9番目のスポットを何人かで争っている状態。危機感、競争意識を持って投げてくれたと思います」とうなずいた。

4回に適時三塁打を放った楽天・石原彪【写真:荒川祐史】

先発投手には「中6日&120球」、クオリティスタート求める

それでは、実戦を重ねた先に見えてくる石井監督の野球とはどんなものなのだろうか。GMとしてチームの方向性、戦略は作ってきたが、試合での具体的な戦術、戦法はまだ誰も見たことがない。

自身も投手出身とあって、8年ぶりに日本球界に復帰した田中将大投手を含む先発投手陣には「アメリカは中4日で100球が目安だが、今年僕としては中6日で120球をクリアしてほしいと思っている」と独自の方針を打ち出している。瀧中を「6回3失点で持ってこれる投手」と評したように、クオリティスタート(6イニング以上投げて自責点3以内)も重視しているようだ。

一方、ベールに包まれているのが攻撃面の戦術である。ヒントを探すと、キャンプインを前にこう語っていた。「実際の試合で起こるのは、型にはまったことばかりではない。選手はその場しのぎというか、場面ごとの対応力が大事になってくると思う」と。

セオリーとは一味違った、場面に応じた“ひらめき”の采配が飛び出しそうなセリフだが、果たしてどうか。石井監督の恩師の故・野村克也氏は、戦力差をひっくり返す「弱者が強者に勝つ方法」を説いていたが、それを彷彿とさせる野球が見られたら、おもしろそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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