【解説】県新年度予算案 経済打撃 財政余力失う

 長崎県一般会計当初予算案が17年ぶりに約7500億円規模に膨らんだのは、新型コロナウイルス感染症対策が盛り込まれた影響が大きい。県は2021年度決算時点で基金(貯金)を取り崩さない健全な財政運営を目指しているが、コロナ禍で財政の余力は失われつつある。
 財源不足を補う財政調整3基金の取り崩し額は、20年度当初予算で142億円だったが、減収補てん債の特例発行などで2月補正予算後には46億円に縮減され、残額は173億円になる見通し。21年度当初予算案でも地方交付税増額やコロナ対策の交付金で取り崩し額は「なんとか20年度並みの141億円に踏みとどまった」(財政課)のが実情だ。
 だが本県の経済活動もコロナ禍で大打撃を受け、県税と地方譲与税収入は約180億円減少する見込み。県は交付税の増額分でカバーするとしているが、感染が収束せず全国規模で経済の落ち込みが続けば、国が交付税の増額措置などで地方財政をいつまで支えられるか不安要素は残る。
 県の財政事情は基幹産業の造船業の低迷などでもともと厳しく、歳入に占める自主財源の割合は36%にすぎない。県はデジタル技術の活用で航空機関連など成長分野の支援に力を入れ税収増を図る方針だが、当面は感染状況と国の対応を注視しつつ慎重な財政運営を迫られそうだ。


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