子どもができたらマイホーム購入?賃貸のままいく?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、25歳、会社員の女性。賃貸で夫と二人暮らしの相談者。子どもを望んでおり、いずれは引っ越しを考えていますが、その際にマイホームか賃貸か、購入する場合は産前・出産後いつがいいか、悩まれています。FPの横田健一氏がお答えします。

同棲を経て昨年結婚し、同い年の夫と夫婦二人で暮らしています。現在の住まいは都内の1LDKですが、30歳までに子どもが欲しいと考えており、そのタイミングでもう少し広い家に引っ越そうと思っております。そこでお伺いしたいのが、次の家は持ち家か賃貸か、ということです。家を買うなら出産前・出産後、いつがいいのか、ローン控除もふまえて考えたいです。

共働きで子育てするのであれば職場に近い場所が良いと聞くので、通勤時間がそこまでかからない場所が良いと思うのですが、ファミリー向け物件で家賃が20万以上となることを思うと、買ったほうが良いのではと思っております。

ただ、私の職場が都心のオフィス街から少々離れており、個人的に「絶対にそこに住みたい」と思うわけではないので、そのような場所に持ち家を買うのが怖い気もしております。とはいえ、子どもの保育園やその後の転校を思うと早めに居住地を固めたほうが良い気もしますし、いつか買うのであれば20代のうちにローンを組んでしまったほうが完済が早いという考えもあります(中古で6,000~7,000万円想定です)。夫は外資系の企業のため今後も転職は予定しております(30歳ごろと考えています)。

「いつか広い家に住みたい、そのために貯金」と思っているのですが、具体的なプラン、頭金などの目標が見えずもやもやしております。何卒宜しくお願い致します。

【相談者プロフィール】

・女性、25歳、会社員、既婚

・同居家族について:同い年の夫と夫婦二人で暮らしています。

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:63万円、年間の世帯の手取りボーナス額:150万円

夫:手取り月収40万、

ボーナス20万前後(ほとんどは年俸÷12で月収としてもらっている)

妻:手取り月収30万、手取りボーナス50万×2回/年

・毎月の世帯の支出の目安:43万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:17万2,000円

・食費:4万円

・水道光熱費:1万円

・保険料:2,000円

・通信費:1万円

・お小遣い:14万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:20万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:30万円

・現在の貯蓄総額:150万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:0円


横田:ご相談頂きましてありがとうございます。株式会社ウェルスペントのファイナンシャルプランナー、横田健一です。

マイホームを買うべきかどうか、買うならいつどこに買うべきか、というご相談ですね。マイホームは一生で最も高い買い物とも言われ、買うべきかどうかも含めて非常に悩ましいテーマであることは間違いありません。まずはライフプランの明確化からしていきましょう。

ライフプランが明確でないと家を買うべきかどうかは決まらない

まず昨年ご結婚されて、30歳までにお子様が欲しいということですが、今後のライフプランやお考えについてもう少し具体的に考えてみていただけますでしょうか。

例えば、次のようなポイントです。

●ご主人様は30歳頃に転職を予定されているということですが、その場合の勤務地はどのあたりというイメージはありますでしょうか。
●ご相談者様ご本人は転職される可能性は低いのでしょうか。また転職されなかったとしても、勤務地が変わる可能性はございませんでしょうか。
●現在のご主人様とご相談者様の勤務地はどのくらい離れているのでしょうか。勤務地を考慮した上で、具体的に住みたい街はありませんでしょうか。
●30歳までにお子様が欲しいということですが、希望としてお子様はお一人でしょうか?それとも2人、3人とお望みでしょうか。
●ご夫婦それぞれのご両親様から相続する可能性があるご実家等の家はありませんでしょうか。ある場合、将来的にはそこに住みたいというお気持ちはありますでしょうか。

特にマイホームの購入を検討される場合、お子様の人数、つまり家族構成が固まってこないと、せっかく購入されたとしてもお子様が増えると手狭になり、住み替え(買い替え)の必要性が高まります。

例えば、お子様は多くても2人までと決められているのであれば、2人生まれることを想定しながらの物件選びということになりますが、結果的に1人だったという場合、必要以上に広い家を購入されてしまうことになり、経済的なご負担が大きなものとなってしまいます。

賃貸と購入、それぞれのメリット・デメリットは?

ライフプランが明確になると賃貸と購入のどちらがよいのかを具体的に検討しやすくなりますが、賃貸と購入、それぞれのメリット・デメリットを改めて確認しておきましょう。

一般的に、賃貸のメリットは次のようになります。
1.ライフスタイル(収入や家族構成など)の変化に柔軟に対応できる
2.設備の維持・修繕費が不要
3.まとまった初期費用が必要ない

次に賃貸のデメリットです。
1.生涯にわたり家賃を支払い続ける必要がある
2.資産として残らない(購入に比べて、その分、資産形成しておく必要がある)
3.高齢になると借りづらくなる
4.壁に穴を開けたりしづらい

一方、購入のメリットは、一般的に次のようになります。
1.住宅ローンの返済が終わると、住居費負担が軽くなり、資産として残る
2.インフレ時には資産価値の保全に役立つ
3.自分の好きなようにリフォーム/リノベーションができる
4.住宅ローンを組むと、団体信用保険に加入するため死亡保険になる
5.スペックの高い設備を利用できる

次に購入のデメリットです。
1.転居がしづらい
2.住宅ローンの返済が長期にわたって固定される
3.固定資産税や管理費・修繕積立金、リフォーム費用などが発生する
4.まとまった初期費用が発生する
5.資産として、住宅価格の変動リスクを負うことになる

賃貸VS購入 それぞれ向いている人は?

こういったそれぞれのメリット、デメリットを考慮すると、まず賃貸に向いているのは次のような人になります。
1.転勤の多い人
2.ライフスタイル(家族構成など)が固まっていない人
3.将来実家に戻る予定のある人

次に購入が向いている人は次のようになります。
1.家族構成や住みたい場所などが明確になっている人
2.自分好みの居住空間を実現したい人
3.老後に向け強制的に資産形成したい人

なお、購入される場合、出産前と出産後でどちらがよいのかについては、明確にどちらがよいということはないと思います。一般的に小さいなお子様を連れての引っ越しはご負担も大きくなると思いますので、ご出産前に購入すると決めることができるのであればご出産前の方がよいと思いますが、お子様が生まれてみてから、「もっと広い家にすべきだった」と感じられる可能性もありますので、慎重に検討していく必要があるかと思います。

住宅ローン控除について押さえておきたいポイント

また、住宅ローン控除については、令和3年度税制改正において控除期間13年間の特例が令和4年末までの入居に延長される見込みですが、一方で会計検査院からの指摘があり、現在の住宅ローン控除率(1%)や控除額については令和4年度税制改正で見直される予定です。現在の住宅ローン控除制度の恩恵をできるだけ大きく受けたい場合には、早めに住宅を購入された方がよいかもしれません。

ただし、ここで重要なことは、住宅ローン控除のメリットが大きいから家を買おう、と考えるのではなく、あくまでご家族のライフプランをまずはしっかりと考えて明確にし、その上で購入すべきか、賃貸にすべきかをご検討いただくということです。経済的におトクだからといって、必要性が低い買い物をする必要はありません。

ポイントをまとめると……

以上、ポイントをまとめますと以下のようになります。
●まずはご家族のライフプランをしっかり考え、できるだけ具体的かつ明確にしていきましょう。
●ライフプランが明確になったら、賃貸と購入のどちらが適しているか、それぞれのメリット・デメリットを考慮してご検討ください。
●もし購入すべきという方向性になるのであれば、住宅ローン控除の適用期限なども考慮しつつ具体的な物件選びなどに進まれるとよいでしょう。

ご参考としていただけましたら幸いです。

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