伊原春樹氏が太鼓判 澤村はメンタルの強さで球威倍増!! 必ずメジャーで成功する

澤村拓一

【伊原春樹 新鬼の手帳】つくづく澤村という投手は“悲喜こもごも”のプロ野球人生を送っていると思う。振り返れば同年代の選手に比べて、本当に数多くの経験を積み上げてきた。巨人ではルーキーイヤーに新人王を獲得。ここから順風満帆にいくかと思いきや、大きな壁に何度もぶち当たった。しかし、澤村はその都度乗り越え、現在の位置にいる。

逆境をバネにしてきた選手は強い。澤村にもその考えがベースにあるに違いない。だからこそ苦節10年で夢のメジャーリーグ移籍を実現させることができたのだろう。

新天地はMLBの名門レッドソックス。澤村は日本選手として8人目の加入だそうだが、ある意味で過去の誰よりも「ラッキー」な立場と言えるかもしれない。昨年のレッドソックスはア・リーグ東地区の最下位。当然ながら澤村への期待値は高く、いかんなく能力を発揮できれば彼は間違いなくヒーローとなるだろう。この構図は昨季途中に移籍したロッテでセットアッパーとして爆発的な活躍を遂げ、チームをCS出場に導いた状況とも重なる。

巨人で10年近く荒波にもまれ、すさまじいバッシングも経験した。トレード移籍も味わった。侍ジャパンのメンバーに選ばれ、国際試合の舞台で心臓をひねりつぶされるようなプレッシャーも知っている。どんな逆境が待っていようとも、自分なら絶対にやれる――。そんなハートの強さが備わっている澤村なら、メジャーの名門球団でも水を得た魚のように躍動するだろう。

澤村のようなパワーピッチャーはメジャーに数多くいる。ただ決して球種は多くないが、そこにメンタルの強さが加味されれば彼の場合は球威が倍加する。あの気持ちのこもった真っすぐ、急角度で沈むフォークは万全なら、名だたる大リーガーをもキリキリ舞いにさせるに違いない。

常に「見返してやる」という気持ちを胸に秘めていることも、澤村の原動力だろう。巨人からトレードに出されたとき、忸怩(じくじ)たる思いもあったかもしれない。しかしレッドソックスへの入団は「SAWAMURA」の名を全米に響かせるチャンスだ。いつかは巨人で…というような“甘い考え”は持たず、今後はメジャーリーガーとして羽ばたいてもらいたい。ハートの強い澤村なら絶対に成し遂げられるはずだ。

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