阪神が女子クラブチームを立ち上げた理由とは 球団OBの野原監督が語る将来像

「阪神タイガースWomen」の監督を務める野原祐也氏【写真提供:阪神タイガース】

初代メンバーは20~31歳の17人、阪神OBの野原祐也氏が指揮を執る

阪神が立ち上げた女子硬式野球クラブチーム「阪神タイガースWomen」が2月11日に鳴尾浜で全体練習をスタートさせた。NPB球団の女子クラブチームとしては、昨春発足した西武ライオンズレディースに続いて2チーム目になる。初代メンバーはセレクションで選ばれた20~31歳の17人。球団が施設の使用や仕事の紹介など全面的にバックアップする狙いや将来像とは? 阪神OBでもある野原祐也監督に話を聞いた。前後編の2回に分けてお届けする。

例年この時期は人影のない鳴尾浜に、縦縞のユニホームを身にまとった女子選手が集結した。体力強化に重点をおいた走り込みや打ち込み、アメリカンノックなど3時間の練習を精力的にこなしていく。初の全体練習を見守った野原監督は「みんな生き生きとして、すごく良い雰囲気で練習を始められました」と笑顔で振り返った。

セレクションを突破して集まった選手は、前人未到の500安打を達成した三浦伊織外野手ら女子プロ野球からの移籍組8人に、大学やクラブチームでプレーしていた選手を合わせた計17人。中には、関西学院大に通う現役女子大生もいる。仕事を持つ社会人や学生が野球を続けられる場を提供したいという球団のメッセージ性が込められたメンバー構成だ。野原監督は「全体練習初日から一生懸命ついてきてくれました。個々で練習をやってきてくれたのだと思います。守備もバッティングも柔らかいですし、上手だなという印象です」とレベルの高さに目を見張った。

昨春発足した西武ライオンズレディースに続く女子チームの創設が球団内で議論されるようになったのはここ1、2年のこと。狙いは女子野球の普及振興だ。女子が野球を始めるきっかけや続けやすい環境を作ると同時に、女子選手の憧れや目標とされるチームを目指す。女子野球人口を増やすことによって、ひいては女性の野球ファン、タイガースファンを増やしたいという願いが込められている。

ロングティーを行う選手たち【写真提供:阪神タイガース】

球団は練習場所に鳴尾浜と甲子園の室内練習場を提供する

時間をかけて準備を進めてきた球団は、全面的なバックアップを惜しまない。練習場所として鳴尾浜と甲子園の室内練習場を提供。現在は月、水、金の平日週3回、午前と夜の2班に分かれて2時間練習し、週末には全体練習を行っている。男子チームがキャンプから戻ってきた後も、空いている時間に女子が練習できるよう調整を図る。トレーナーら球団スタッフも協力的で「みなさん『なんでも聞いてくれ』と仰ってくださいます。トレーニング計画などいろいろとアドバイスをもらっています」と野原監督は感謝する。

女子野球選手が競技を続ける上で悩みの種である仕事についても、球団がグループ会社などに紹介をしている。三浦外野手ら5人が球団アカデミーのベースボールスクールコーチに就任。月曜日から金曜日の毎日午後からクラスを受け持ち、未就学児から小学生までを教えている。ほかに、4月から甲子園球場の歴史館とアカデミーの仕事を兼務する選手が2人。女子チームのサポーター企業になっている「ゼンコーサービスグループ」の関西支社で働く選手が3人いる。

今後は5月に開催される関西女子硬式野球ラッキートーナメントを皮切りに、関西女子野球連盟と全日本女子野球連盟の大会に参加する。

西武ライオンズレディースは昨年の全日本女子公式クラブ選手権大会で初出場初優勝したが、野原監督は腰を据えて愛されるチームを作っていく構え。「まずはみなさんに応援してもらえるチームになること。新規参入で立ち上がったチームですので、日本一というところよりも、女子野球の普及につなげられるように頑張っていきたいと思います」と力を込めた。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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