NPB打者を空振り三振に… 夢への一歩を踏み出した“SNSナックルボーラー”の今

オリックス2軍との練習試合に登板した火の国サラマンダーズの佐野大河【写真:橋本健吾】

火の国サラマンダーズの佐野はナックルを武器にオリックス2軍相手に登板

魔球・ナックルボールを武器にNPB、MLB入りを目指す佐野大河投手が夢への第一歩を踏み出した。今季から九州独立リーグ・火の国サラマンダーズに加入した佐野は21日、オリックス2軍との練習試合に登板し2回2安打1失点。SNSで話題を集めた右腕の現在地に迫った。

佐野は千葉大学硬式野球部在学中に“フルタイム・ナックルボーラー”としてSNS上で注目を集め、ナックルを武器にプロ入りを目指すことを決意。大学3年時に退部すると2020年に関西独立リーグの堺シュライクスに入団。そして今年からは新興球団の「火の国サラマンダーズ」でプレーしている。

NPB球団を相手に投げるのは人生初だった。「投げる前からワクワクしていた」と念願だったマウンドが訪れたのは3回。2番手としてマウンドに上がると2イニングを2安打1失点1奪三振。3四球と制球面で課題を残したが1軍経験もある勝俣翔貴内野手からは外角に沈む104キロのナックルで空振り三振を奪った。

「NPBはやっぱりスイングも速いし凄い。ですが、低めに集めたナックルはある程度、通用したかなと思います。一番の課題は制球力。どうしても高めに浮くと弾き返されるので」

3回は先頭に四球を与えたが三ゴロ併殺、三ゴロと危なげない投球を見せたが、2イニング目となった4回は四球に連打を浴び無死満塁のピンチから犠飛で1点を失った。それでも続く勝俣を空振り三振、続く岡崎に四球を与えたがフェリペを三ゴロに抑え最少失点で切り抜けて見せた。

馬原氏「小学生や中学生でも打てる可能性も、打てない可能性を考えた場合はプロの一流まで横一線」

自分が磨き上げてきた“魔球”に自信も得た。揺れて落ちる予測不能の軌道にオリックス打者の反応も様々。ファウルで粘り、時には首をかしげる。佐野自身も「ジャストミートされたのは打たれたヒット1本ぐらいだったと思う」と語る。

心強い存在もいる。チームの投手コーチを務めるのはソフトバンク、オリックスで通算182セーブをマークした馬原孝浩氏だ。一芸を武器にする佐野について「多分、小学生や中学生でも打てる可能性もあると思う。でも、打てない可能性を考えた場合はプロの一流まで横一線。それぐらい変化が1球1球違う」と評価する。

最速130キロのストレート、そして100キロ~110キロ台のナックルで一流打者をねじ伏せるのは相当高いレベルが求められる。今後の課題については「ただ、精度という意味ではまだ未完成。精度さえ上がってきてクイックとか技術的なところが上がってくると結構、幅が広がってくる。緩急という意味でも面白い。能力がそれほど高い子ではないので、自分の能力(ナックル)をフルに最大限引き出してやっていけば面白いと思う」と、ナックルを突き詰めることを求めている。

今後も「火の国サラマンダーズ」はソフトバンクの3軍などNPB球団とも試合を行っていく予定。今春に全ての単位を取得し千葉大の卒業も決まり「このリーグで活躍してNPB、MLBに入ることが目標です」。異色の右腕の挑戦はまだ始まったばかりだ。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

© 株式会社Creative2