神奈川県施設の障害者支援「利用者目線ではない」 やまゆり園事件踏まえ検討部会報告

県立障害者施設の利用者支援の在り方について議論する検討部会のメンバーら=県庁

 神奈川県立の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件を踏まえ、県立施設の利用者支援の実態を検証する県の有識者組織は22日、報告書の素案をまとめた。職員に身体拘束は禁止であることの認識が低く、身体拘束ありきの支援を行っている事例などがみられたことから、「利用者目線の支援にはなっていない状況が確認された」と報告した。

 「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」(部会長・小川喜道神奈川工科大名誉教授)が昨年7月以降、県直営と指定管理者制度の計6施設について身体拘束の実態調査や職員らのヒアリングを進めてきた。

 素案では、虐待ゼロを目指す取り組みとして、考え方の改善や虐待通報の徹底、不適切な支援をチェックできる組織体制づくりなどを提示した。

 今後については、「県立障害者支援施設の役割として民間施設で受け入れ困難な重度障害者を受け入れてきたが、大規模施設に集約して支援することは限界がある」とし、民間施設を含め県全体での議論の必要性を掲げた。

 小川部会長は会議後の会見で「県が変わっていくための第一歩を踏み出したと感じている。報告書は支援の在り方を変革する提案にしていかなければならない」と語った。

 検討部会では県の関与の問題点なども踏まえた上で素案を修正し、今年3月までに報告書をまとめる。

© 株式会社神奈川新聞社