DeNAドラ1・入江のスーパー「脳」力 初登板でプロとアマのストライクゾーンの違いを学習

DeNA・入江大生

【赤坂英一 赤ペン!!】DeNAのドラフト1位ルーキー・入江大生投手(22=明大)が先発ローテ入りに向けて着実に前進中だ。少々気が早いかもしれないが、大卒の先輩、浜口や東のように1年目から2桁勝てる可能性もある。

対外試合初登板だった先月20日のロッテ戦は、先発して2回1本塁打を含む3安打3失点。が、2試合目の同27日の日本ハム戦は先発で3回1安打無失点と修正能力の高さを見せた。

私が感心させられたのは球の力以上のクレバーさだ。初登板でロッテ・吉田に本塁打されると、すぐさま冷静に原因を分析し、自分の課題を把握していたのである。このとき、入江は2球で吉田を追い込み、真っすぐの「ベストボール」で3球三振に打ち取ろうとしたら、判定はボール。そこで4球目に「もっと強いベストボールを同じコースに投げたら少し内に入って」本塁打にされた。これで「プロとアマの差」を痛感したという。

「真っすぐを待っている打者に、真っすぐが甘く入れば打たれる。それを1球で捉えるのがプロで、2球目になるのがアマ」

そう悟った入江は次打者の佐藤をフォーク、続く山口をスライダーで空振り三振に仕留めた。

「相手が真っすぐを狙っていたら変化球、逆に変化球を待たれていたら真っすぐを投げれば、自分の力でも押し切れる、またかわすことはできる」

それ以上に重要な収穫は、プロとアマのストライクゾーンの違いに初登板で気づいたことだ。

「アマと違ってゾーンは狭い。奥行きもコーナーも。いろんな面を自分のものにしていきたい」

実はここ数年、大卒の投手が伸び悩んでいる原因の一つが、このストライクゾーンの違いなのだ。ある球団のスカウトもこう強調している。

「最近の大学野球はストライクゾーンが相当広くなっている。入江が投げていた東京六大学リーグは特にその傾向が強い。そういう投手がプロに入ってくると、決め球のつもりで投げた球がことごとくボールにされる。それで自分の投球を見失う新人が増えているんですよ」

その点、入江は初登板の映像もチェックしてプロのゾーンを把握。次の日本ハム戦では無失点に抑えただけでなく、大田、渡辺を2者連続見逃し3球三振に仕留めた。

教訓を得た初登板を、自ら「プロの洗礼を受けました」と評して笑いを誘った入江。このセンスがあれば、巨人との開幕カード3戦目に先発も…などと期待するのは、それこそ気が早いかな。

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

© 株式会社東京スポーツ新聞社