豪州SC開幕戦はレッドブル・ホールデンが制圧。SVGが週末連勝で完璧なシーズン幕開けに

 2月27~28日の週末に待望の2021年開幕戦『レプコ・マウント・パノラマ500』を迎えたRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ(旧VASC)は、今季初の公式練習から聖地バサーストが牙を剥く荒れた展開となるなか、ホールデン陣営トップチーム、Triple Eight Race Engineering(トリプルエイト・レースエンジニアリング)でWエースを務める2016年王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンが、土曜、日曜の両ヒートを制する圧巻のパフォーマンスで開幕戦を制覇。Red Bull Ampol Racing(レッドブル・アンポル・レーシング)が最高のシーズンスタートを決めている。

 分割開催となった開幕前公式テストでも、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の余波で5日間の延期を強いられるなど、依然としてCOVID-19に翻弄されてきた南半球を代表するツーリングカー・シリーズだが、この2月末に晴れて新シーズン開幕のときを迎えた。

 その舞台となったのは、シリーズの魂とも言うべき伝統のバサーストで、例年10月開催の『バサースト1000』と並び、このマウントパノラマで1シーズン2回開催の変則カレンダーが採用されることとなった。

 今回、250kmの短期決戦を土日の2日間にわたって争うスーパースプリント・フォーマットを採用したバサーストでは、今季初となる公式練習からアクシデントが発生。事前のウイントン・テストで最速タイムを刻んでいた今季昇格組の初代TCRオーストラリア王者ウィル・ブラウン(ホールデン・コモドアZB/エレバス・モータースポーツ)が、ダウンヒルセクションで左右ウォールの餌食となり赤旗中断。

 再開後はWalkinshaw Andretti United(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/WAU)で2年目を迎えるチャズ・モスタート(ホールデン・コモドアZB)が、昨季『バサースト1000』のポールタイムに迫る記録でタイムシートの最上位に立つ好調さを披露した。

 しかし土曜予選が始まると、やはりフォード・マスタング・スーパーカーの面々が黙っておらず、今季からTeam Penske(チーム・ペンスキー)との提携を解消したDick Johnson Racing(ディック・ジョンソン・レーシング/DJR)のアントン・デ・パスカーレ(フォード・マスタング)が、計時予選で自身の移籍初戦に華を添えるトップタイムをマーク。続くトップ10シュートアウトでは、同じくフォード系トップチームのTickford Racing(ティックフォード・レーシング)から参戦するキャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング)がポールポジションを獲得してみせた。

公式練習では、初代TCRオーストラリア王者ウィル・ブラウン(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)が、赤旗中断の原因となってしまう
マスタング初戦でフロントロウを獲得したティム・スレイド(Team Cool Drive Racing)だが、R1終盤で洗礼を浴びる結末に
R1、R2とも実質的に序盤のレースを引っ張ったキャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング/Tickford Racing)だが、勝利はならず

■「これほど接近したレースを僕は心から歓迎し、愛している」とSVG

 2番手に今季からマスタングにスイッチしたTeam Cool Drive Racing(チーム・クールドライブ・レーシング)のティム・スレイド(フォード・マスタング)が続き、フォード勢がフロントロウを独占。セカンドロウ3番手にホールデン最上位のSVGが入り、その背後にパスカーレ、レギュラー復帰のウィル・デイビソン(DJR/フォード・マスタング)と、マスタング勢が包囲するグリッド順となった。

 そのまま午後にスタートが切られた2021年最初の250kmレースでは、オープニングの10周でふたたび波乱が巻き起こり、移籍初戦で気合の入っていたパスカーレが、3番手浮上直後にシェルV-Powerカラーのマスタングを御しきれずウォールにヒット。これでいきなりセーフティカー(SC)導入が宣言される。

 するとここでフォード勢に負の連鎖が巻き起こり、首位ウォーターズがグリーンフラッグを待たずにパワーステアリングの問題でガレージイン。レース中断前からそのテールに迫っていた2番手SVGが、労せずしてトップのポジションを手に入れる。

 さらにレース終盤にはダウンヒル進入の“フォレスト・エルボー”でオーバースピードとなったスレイドが、激しくウォールに激突。このアクシデントにより、マスタング初戦を飾ることなく週末の戦列を去ることとなった。

 これで楽になった2020年の『バサースト1000』勝者SVGは、背後に迫って来たモスタートとのマージンをコントロールする余裕で今季初勝利。開幕初戦を制し、最高のスタートを切る結果に。

 続く日曜もSVGの勢いは衰えず。計時予選、トップ10シュートアウトで最速を奪うと、2位ウォーターズ、3位モスタートを従えてトップチェッカー。週末フルマークの300ポイントを獲得して、選手権でもロケットダッシュを決めている。

「両日の予選、決勝ともホールデン、フォードの両メーカーが本当に接近した勝負を繰り広げた。日曜のレースも一旦マスタングに先行を許したけど、僕らはそれを覆して勝利を得られたね。これほど接近したレースを僕は心から歓迎し、愛している」と、完全制圧の喜びを語ったSVG。

 こうして平穏無事に2021年開幕を迎えたRSCだが、続くシリーズ第2戦は3月20~21日の週末にサウンダウンでのスーパースプリント戦が予定されている。

DJR勢は、レギュラー復帰組のウィル・デイビソンがR1で3位表彰台を獲得。一方のアントン・デ・パスカーレもR2で4位に喰い込んだ
週末を7位と6位で終えた7冠王者ジェイミー・ウインカップ。「今回はSVGの週末だったということ」と冷静な一言
新エンジニアとの初戦で見事ダブルを達成したSVGは「チームの雰囲気が本当に素晴らしかった」とクルーを称えた

© 株式会社三栄