9日に川崎市提訴 多摩川浸水被害住民ら

川崎市役所

 2019年秋の台風19号による大雨で多摩川の水が排水管を逆流、川崎市の市街地が浸水被害に見舞われた問題を巡り、市に慰謝料などの損害賠償を求めて提訴する被災住民の弁護団は3日、「賠償による生活基盤再建と政策形成を勝ち取る裁判」と意義を語った。9日の横浜地裁川崎支部への提訴を前に、市役所で会見した。

 訴状によると、市は水位が付近の最低地盤高に達する事態を予見していたにもかかわらず、川に通じる排水管のゲートを閉めずに河川水が逆流したと主張。川岸卓哉弁護士は「責任を明らかにし、認めさせる」と述べ、原告以外の住民も救済する制度や再発防止策の策定につなげたい意向を示した。

 一方、福田紀彦市長は3日の定例会見で「想定以上に水位が上がり、このような被害になってしまった。市に瑕疵(かし)はないと結論付けている」と説明。被災者の心情として市に賠償責任を求める動きに理解を示した上で、「裁判の中で市の主張を丁寧に説明していく」と述べた。

 弁護団によると、原告は2日までに、中原、高津区の計71個人・法人。請求額は1人当たり慰謝料100万円と、家屋、家財賠償費など計約2億5千万円前後に上る見通し。

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