長崎市野母町の工場跡地などで、同市の絶滅危惧II類、県の準絶滅危惧種に指定されているニホンアカガエルの産卵が確認された。カエルの生態に詳しい長崎女子短大の松尾公則教授(69)によると、野母崎地区での産卵は2009年の確認が最後。12年ぶりの発見に、松尾さんは「命をつないでいる場所があってうれしい」とほほ笑んだ。
ニホンアカガエルは本州、四国、九州に分布する日本の固有種。県内は本土、壱岐、平戸に生息している。成体は体長5センチほど。冬場に、日当たりのいい水たまりや池に産卵する。水田の放棄や乾田化などで産卵場所が失われ、生息数が減少している。
松尾さんは毎年、野母町の野母崎総合運動公園にある池を調査。10年以降も調査を続けたが産卵は確認できず、「野母崎にはいなくなってしまったかと思った」という。
一方、野母崎地区で生きものなどに関する講座を開く「のもざき自然塾」塾長の山本春菜さん(35)は1月、それらしき卵塊を発見。2月、写真を松尾さんに送り、ニホンアカガエルのものだと判明した。松尾さんは3月2日に山本さんと現地を訪れ、地域住民の協力で新たに発見された場所も回った。このうち工場跡地では、放置されたプラスチック製の箱の中に卵塊とふ化したオタマジャクシを確認。さらに親ガエルと思われる雄も発見した。「こんなところにアカガエルがいるとは。生き延びてくれていた」と喜んだ。
同行した山本さんも「絶滅危惧種にならないよう、次の冬には子どもたちと水たまりを作ったり、観察会をしたりしたい」と話している。
ニホンアカガエルの産卵確認 長崎・野母崎地区で12年ぶり
- Published
- 2021/03/05 14:00 (JST)
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