西武本拠地の改修完了 メットライフドームが「半屋外球場」にこだわる理由

半屋外のメットライフドーム

西武は8日、3年、約180億円を投じた本拠地・メットライフドームエリアの改修工事を終え、リニューアルされた本拠地球場を報道陣に公開した。

竣工式に出席した後藤高志オーナー(72)は「計画が2017年にスタートして3年。昨年からのコロナ禍の中で遅延や事故もなくこの日を迎えられた。改修工事の目的はボールパーク化と育成強化。球場が様々なエンターテインメント性を具備し、あらゆる世代の方に試合、コンサート等のイベントをエンジョイしていただきたい」と球場施設周辺のリニューアルを喜んだ。

中でも同オーナーは「私が特にうれしかったのはダグアウトの部分。選手の(ベンチの)前に空調が完備されたこと。今までのメットライフドームは『夏暑く、冬寒い』という非常に自然環境に応じた球場だった。それが空調によって夏は冷気が、冬は暖気が出るということで選手諸君にとっても戦う環境が整備された」とコメント。同球場が長年抱えてきた懸案の〝暑さ、寒さ対策〟への緩和策に力を込めた。

とりわけ酷暑の夏には暑い空気がドーム内にこもりサウナ状態となるメットライフドーム。試合前の練習中にはビジター球団のトレーナーから「必要以外でベンチからグラウンド側に出ないこと」とお達しが出されるほど、選手の体力と集中力を奪ってきた。

その緩和策として両軍ベンチとバックネット裏のVIP席など一部のラグジュアリー座席に空調、送風システムが設置され内野グラウンドレベルからドーム全体を快適化していこうという設備が導入された。

これがどこまで「サウナドーム」と呼ばれる8月、9月の不快指数を緩和するのかは未知数だが、多くのファンが指摘するように「ドームの壁がフルオープンである以上、根本的な解決にはならないのでは」という懸念は依然残ったままだ。

では、なぜ毎年多くの苦情が寄せられる「自然環境共生型」のメットライフドームは半屋外にこだわってきたのか。

1999年の西武ドーム竣工当時を知る元西武グループ関係者は「ドーム周辺の環境を見て分かるように、当地は狭山緑地等に囲まれた自然にあふれた丘陵地域。公園法などのからみもあってその一体施設である球場は壁がないからその適用を受けられてきた」とフルオープンであることの意味に触れている。

都市計画上、緑地公園の一部であるメットライフドームは建物を密閉する壁がなく、それと一体化していることで税制上の優遇なども受けられているということのようだ。それを総合的に勘案すれば、一部ファンが望む「完全ドーム化」という観戦環境への移行は今後も望み薄ということになる。

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