<3.11 未来へつなぐ> “都市防災”東京の防災対策、最前線に迫る!(後編)

東日本大震災の発生から10年がたちました。東京を近い将来襲うといわれている首都直下地震や、都内の島しょ部にも甚大な被害をもたらすと予想されている南海トラフ地震などに対する「都市防災」について、東京の防災対策の“今”を取材しました。

<帰宅困難者は? 六本木ヒルズは防災拠点「逃げ込める街」実現へ>

10年前の東日本大震災で、東京都内では多くの街で帰宅困難者があふれました。首都直下地震が発生した場合には、この時より多い最大490万人の帰宅困難者が発生すると試算されています。内閣府は混乱や危険を避けるため「無理に帰宅するのではなく、その場にとどまることも大切」と呼び掛けています。そうした中、民間でも災害に強い街づくりを掲げ、東日本大震災以降、帰宅困難者に対する対策を強化する事業者が増えています。

六本木ヒルズなどを運営する森ビルは、災害時に「逃げ込める街」を提言し、建物の被災状況を即座に推測できるシステムを独自に開発するなど、都市防災力の向上を進めています。さらに、災害時の一時滞在施設として10万食の食料や生活必需品、毛布や医薬品のほか、新型コロナウイルスなどの感染症対策用品も備蓄されています。六本木ヒルズでは商業ゾーンを利用して帰宅困難者を受け入れようと考えています。また、災害による停電に備え、都市ガスを利用した自家発電プラントが整備されていて、およそ1万世帯分に当たる1日平均27万キロワットの電気供給が可能で、避難者を受け入れることができます。

森ビルでは東日本大震災以降、港区と協定を結び、森ビル関連施設全体で1万人の帰宅困難者を受け入れる体制を整えています。森ビル・災害対策室の細田隆事務局長は「ハードとともにソフト面でも全社で年2回の大きな訓練を行っている。また、震災対応の初動を担う社員が六本木ヒルズの半径2.5キロ圏内に150人ほど居住している。『逃げ込める街』として地域の防災拠点になるよう、準備を重ねていきたい」と話しています。

<島しょ部の津波対策 新島や大島で対策進む>

巨大地震とともに警戒が必要なのが「津波」です。東京都は2013年、南海トラフ地震が起きた際の被害想定を公表しました。

この中で、新島では地震発生からおよそ14分後、最大で30メートル程度の津波が到達するとされました。試算によると、2300人の住民のうち、およそ6割に当たる1300人が亡くなると想定されています。沿岸部の平坦な地形に多くの島民が住む新島村では、東京都の被害想定を踏まえ、避難タワーや避難の対象外となる標高30メートルの高台に逃げるための避難路を整備しています。さらに東京都が管轄する600人を収容できる港の避難所も設置されました。

島民およそ8300人の伊豆大島では、1600人の避難者を受け入れる施設を2019年に完成させました。港湾利用者が自発的な避難を行えるよう、港湾施設内にJアラートの津波警報などを伝達するための設備も設置しています。

東日本大震災を教訓に、自治体も企業もそれぞれの安全対策は強化されています。しかし、震災はいつやってくるか分かりません。いま"この瞬間”に起きるかもしれません。

あなた自身の防災対策は、本当に足りていますか…。

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